久しぶりに元気のいいテクノを聴きました。ジャンルが細分化されているので、うかうかとテクノというと鼻で笑われそうですが、細分化前のテクノという言葉がよく似合います。ただし、今の分類では、レザー・ストリップは一般にダーク・エレクトロと紹介されます。

 レザー・ストリップはデンマーク生まれのクラウス・ラーセンによるプロジェクトです。ラーセンはさまざまなバンドを経て、1988年にレザー・ストリップを名乗って活動を始めました。1967年生まれですから、今では名実ともにベテランの範疇に入ります。

 すでにさまざまなレーベルから数多くの作品を発表していますけれども、その精力はまるで衰えず、今でも新しい作品を発表しているとともに、忙しくツアーもこなしている現役バリバリのアーティストでもあります。ヨーロッパ大陸のエレクトロ・シーンは盛況です。

 本作品は、そんなレザー・ストリップによる他のアーティストの曲のカバー集「アプリーシエイション」の第六弾です。アプリーシエイションは、アーティストを讃える時によく使われる言葉で、ファン・クラブもアプリーシエイション・ソサエティとされることが多いです。

 そのタイトル通り、このシリーズではラーセンが先達に敬意を払いつつ楽曲をカバーしています。悪意や皮肉などは一切ありません。本作品では11曲が取り上げられていますけれども、そんなマニアックな曲を取り上げるか、といった驚きはありません。むしろ逆。

 なんたって、一曲目はデュラン・デュランのヒット曲「グラビアの美少女」です。逆にそんな王道を取り上げるのかと驚くわけです。しかも、冒頭のシャッター音までカバーしていてとても楽しそうです。メロディーも崩すわけではなく、とてもストレートなカバーになっています。

 カバーされているのは、デュラン・デュランの他にPJハーヴィー、キャバレー・ヴォルテール、イレイジャー、タニタ・ティッカラム、ウルトラヴォックス、カーヴ、ヤズー、パレード・グラウンド、ザ・スキッズと、いずれもラーセンと同世代ないし少し前のパンク/ニュー・ウェイブ世代です。

 中ではベルギーのエレクトロ・デュオ、パレード・グラウンドがちょっと珍しいくらいです。ジャンルとしては、超メジャーのウルトラヴォックスを始め、エレクトロニクスを取り入れたバンドが中心であることは間違いありません。選曲もとても素直で奇を衒うところはありません。

 こうした楽曲を比較的原曲に忠実に自分の得意なサウンドに落とし込んでいます。レザー・ストリップはEBM、すなわちエレクトロ・ボディー・ミュージックに分類されることが多いように、ずんずんと響くドラム・サウンドが特徴です。ここにシンセらしいシンセ音が足されていきます。

 そしてボーカルは腹に力を入れた低音ボイスで突っ走ります。影響を受けたアーティストとしてドイツのDAFの名前があがっていましたが、激しく同意いたします。いずれも疾走感がたまりません。久しぶりに元気のいいテクノを聴いたと思ったのも分かって頂けると思います。

 レザー・ストリップにとっては、息抜きっぽい企画なのでしょう。すでに6作目まで到達していることを考えると本人も楽しくてしょうがないことでしょう。原曲への敬意も感じられますし、聴いている方も知っている曲が多くてとても楽しいです。こういうカバー集もいいですね。

Appreciation VI / Leather Strip (2023 Cleopatra)

なぜか公式チャンネルにVIだけ見当たりません。トラブル?
https://leaetherstrip.bandcamp.com/track/girls-on-film-duran-duran-cover

Tracks:
01. Girls On Film グラビアの美少女 - Duran Duran cover
02. Man Size - PJ Harvey cover
03. Kino - Cabaret Voltaire cover
04. Leave Me To Bleed - Erasure cover
05. Twist In My Sobriety - Tanita Tikaram cover
07. All Stood Still - Ultravox cover
08. Missing Link - Curve cover
09. State Farm - Yazz [Yaz] cover
10. Strange World - Parade Ground cover
11. Into The valley - The Skids cover

Personnel:
Claus Larsen