アメリカを代表するヒップホップ・スターとなった21サヴェージの4作目のアルバム「アメリカン・ドリーム」です。21サヴェージ自身の生涯をつづったドキュメンタリーの公開に合わせて制作した作品である、とフェイクをかました作品です。ややこしい。
結局、映像作品は作られてはいないわけですが、アルバムのタイトルからして自伝的であることが分かります。しかも、最初と最後に息子について語っているのは21サヴェージの母親自身です。アメリカン・ドリームを叶えた息子への思いが胸を打ちます。
21サヴェージについては、イギリスに生まれてアメリカに育ったもののビザに問題があるところから始まって、麻薬の売人、強盗、車の窃盗などの犯罪歴やら銃撃戦で仲間を失ったことなど、その壮絶な人生は話題に事欠きません。それを経たアメリカン・ドリームです。
ヒップホップはとにかく語りが多いわけですから、人生がそこに乗っかってきます。日本でいえば苦労に苦労を重ねたことが歌の肥やしになる演歌の世界に近い。音楽を味わう際に、アーティストの人生を丸ごと重ねていくわけです。はまると感動も大きい。
21サヴェージはかねてより、その音楽に自伝的な要素が強いとされてきました。本作品でもコラボレートしているプロデューサー、メトロ・ブーミンは21サヴェージを「音楽を作る、最後の本物のストリート・ニガの一人」と呼びます。ストリートのリアルがつまっているわけです。
本作品でもそのリアルを正面からぶつけてきているのでしょう。リリックを理解できているわけではありませんけれども、何とも生々しくて重い世界は十二分に伝わってきます。まるで映画を見ているようです。リアルなのですけれども、縁遠い世界。
21サヴェージのラップ・スタイルは、「悪党じみた単調でゆったりとした口調」がトレードマークだといわれます。あまり早口ではない分、どすがきいています。いかにもなラップ調ではなく、ごく自然なトーンの中にリズム感が埋め込まれているようで、凄味が倍増します。
プロデューサー陣もブーミンを始め錚々たる名前が並んでいますし、フィーチャリング・アーティストも豪華そうです。いずれの仕事も、サヴェージのラップ・スタイルに合わせて、落ち着いたサウンドを作り上げており、アルバムの統一感がいや増しに増しています。
アルバムを締めくくる「ダーク・デイズ」でのマライア・ザ・サイエンティストのゆったりとした美しいボーカルはその象徴です。ここに再び登場するサヴェージの母親の落ち着いた語りが加わり、何ともいい作品を聴いたなあとしみじみと余韻を噛みしめることになります。
サンプリングされている楽曲もR&Bのローズ・ロイスの「ウィッシング・オン・スター」に始まり、ほとんどが落ち着いた曲調のものです。ギャングスタといえばこれ以上ないくらいの経歴の21サヴェージですから、これがどんどんまた凄味を増していきます。凄い凄い。
本作品は当然のごとく全米1位になっていますし、世界各国で大ヒットしています。「リドラム」を始め、シングル・ヒットも誕生していますし、21サヴェージの快進撃は止まっていないということです。重厚な素晴らしい作品はヒップホップの現在形の極みなのでした。
American Dream / 21 Savage (2024 Slaughter Gang)
Tracks:
01. American Dream
02. All Of Me
03. Redrum
04. N.H.I.E.
05. Sneaky
06. Pop Ur Shit
07. Letter To My Brudda
08. Dangerous
09. Née-Nah
10. See The Real
11. Prove It
12. Should've Wore A Bonnet
13. Just Like Me
14. Red Sky
15. Dark Days
Personnel:
21 Savage : vocal
***
Doja Cat, Young Thug, Metro boomin, Lil Durk, Travis Scott, Summer Walker, Brent Faiyaz, Buma Boy, Tommy Newport, Mikky Ekko, Mariah the Scientist : featuring artists
Allen Ritter, BoogzDaBeast, Cardo, Coupe, Dpat, FnZ, g06beatz, Honorable C.N.O.T.E., ibmixing, Isaiah Brown, Johnny Juliano, Jonah Stevens, Jonas Lee, Kid Hazel, Kurtis McKenzie, KXVI, Lil Tyh, London on da Track, Metro Boomin, OG Parker, Scribz Riley, Smash David, Spiff Sinatra : producer
Heather Carmillia Joseph : additional vocals
Spiff Sinatra : keyboards, drums
James Owens Jr. : keyboards
Isaiah Brown : keyboards, strings
Rose Royce : additional vocals
Noc : drums
Jalen Jackson : keyboards
Usher : additional vocals
Nineteen85 : keyboards
Peter Lee Johnson : strings
21 Lil Harold : additional vocals
Paola Barba : additional vocals
Higher Learning : choir
Ink : additional vocals
結局、映像作品は作られてはいないわけですが、アルバムのタイトルからして自伝的であることが分かります。しかも、最初と最後に息子について語っているのは21サヴェージの母親自身です。アメリカン・ドリームを叶えた息子への思いが胸を打ちます。
21サヴェージについては、イギリスに生まれてアメリカに育ったもののビザに問題があるところから始まって、麻薬の売人、強盗、車の窃盗などの犯罪歴やら銃撃戦で仲間を失ったことなど、その壮絶な人生は話題に事欠きません。それを経たアメリカン・ドリームです。
ヒップホップはとにかく語りが多いわけですから、人生がそこに乗っかってきます。日本でいえば苦労に苦労を重ねたことが歌の肥やしになる演歌の世界に近い。音楽を味わう際に、アーティストの人生を丸ごと重ねていくわけです。はまると感動も大きい。
21サヴェージはかねてより、その音楽に自伝的な要素が強いとされてきました。本作品でもコラボレートしているプロデューサー、メトロ・ブーミンは21サヴェージを「音楽を作る、最後の本物のストリート・ニガの一人」と呼びます。ストリートのリアルがつまっているわけです。
本作品でもそのリアルを正面からぶつけてきているのでしょう。リリックを理解できているわけではありませんけれども、何とも生々しくて重い世界は十二分に伝わってきます。まるで映画を見ているようです。リアルなのですけれども、縁遠い世界。
21サヴェージのラップ・スタイルは、「悪党じみた単調でゆったりとした口調」がトレードマークだといわれます。あまり早口ではない分、どすがきいています。いかにもなラップ調ではなく、ごく自然なトーンの中にリズム感が埋め込まれているようで、凄味が倍増します。
プロデューサー陣もブーミンを始め錚々たる名前が並んでいますし、フィーチャリング・アーティストも豪華そうです。いずれの仕事も、サヴェージのラップ・スタイルに合わせて、落ち着いたサウンドを作り上げており、アルバムの統一感がいや増しに増しています。
アルバムを締めくくる「ダーク・デイズ」でのマライア・ザ・サイエンティストのゆったりとした美しいボーカルはその象徴です。ここに再び登場するサヴェージの母親の落ち着いた語りが加わり、何ともいい作品を聴いたなあとしみじみと余韻を噛みしめることになります。
サンプリングされている楽曲もR&Bのローズ・ロイスの「ウィッシング・オン・スター」に始まり、ほとんどが落ち着いた曲調のものです。ギャングスタといえばこれ以上ないくらいの経歴の21サヴェージですから、これがどんどんまた凄味を増していきます。凄い凄い。
本作品は当然のごとく全米1位になっていますし、世界各国で大ヒットしています。「リドラム」を始め、シングル・ヒットも誕生していますし、21サヴェージの快進撃は止まっていないということです。重厚な素晴らしい作品はヒップホップの現在形の極みなのでした。
American Dream / 21 Savage (2024 Slaughter Gang)
Tracks:
01. American Dream
02. All Of Me
03. Redrum
04. N.H.I.E.
05. Sneaky
06. Pop Ur Shit
07. Letter To My Brudda
08. Dangerous
09. Née-Nah
10. See The Real
11. Prove It
12. Should've Wore A Bonnet
13. Just Like Me
14. Red Sky
15. Dark Days
Personnel:
21 Savage : vocal
***
Doja Cat, Young Thug, Metro boomin, Lil Durk, Travis Scott, Summer Walker, Brent Faiyaz, Buma Boy, Tommy Newport, Mikky Ekko, Mariah the Scientist : featuring artists
Allen Ritter, BoogzDaBeast, Cardo, Coupe, Dpat, FnZ, g06beatz, Honorable C.N.O.T.E., ibmixing, Isaiah Brown, Johnny Juliano, Jonah Stevens, Jonas Lee, Kid Hazel, Kurtis McKenzie, KXVI, Lil Tyh, London on da Track, Metro Boomin, OG Parker, Scribz Riley, Smash David, Spiff Sinatra : producer
Heather Carmillia Joseph : additional vocals
Spiff Sinatra : keyboards, drums
James Owens Jr. : keyboards
Isaiah Brown : keyboards, strings
Rose Royce : additional vocals
Noc : drums
Jalen Jackson : keyboards
Usher : additional vocals
Nineteen85 : keyboards
Peter Lee Johnson : strings
21 Lil Harold : additional vocals
Paola Barba : additional vocals
Higher Learning : choir
Ink : additional vocals