フランク・ザッパ先生の人気作の一つ「ザッパ”雷舞”・イン・ニューヨーク」の発表40周年を記念するデラックス・エディションです。CDにして5枚組となる大ボリュームで発売されました。しかもニューヨークのマンホールを模した変形ボックス入りの豪華版です。

 「ザッパ・イン・ニューヨーク」は1976年12月26日から29日にかけて、ニューヨークのパラディアムにて行われたライヴを収録した作品です。先生がパラディアムで演奏するのはこれが初めてでしたが、大そう気に入ったようで、後に繰返し使用されることになりました。

 本作品にはまずオリジナルLPのミックスが収録されました。先生は1990年にオリジナルをCDで発売した際に、曲が追加されただけではなく、CD用にミックスも変更していますから、オリジナル・ミックスがCD化されるのはこれが初めてのことです。

 CDの2枚目から4枚目はボーナスとしてCD1には含まれないこのコンサートからの音源が収録されています。中で目をひかれたのは名曲「ブラック・ナプキン」の28分を超える演奏です。原曲は「ズート・アルアーズ」に収録された先生のギターを聴かせる曲です。

 ところが、ここではホーン陣が大活躍しています。このホーン陣の参加が本作品におけるザッパ・バンドの特徴です。聞けばこのホーン・セクションの参加が決まったのは12月11日に先生が有名なTV番組「サタデイ・ナイト・ライヴ」に出演した時だといいますから驚きです。

 何でも同番組専属のホーン・セクションの3人が先生と一緒に演奏した後、何か一緒にやりたいと申し出たのだそうで、先生はこれを快諾し、そこから一気にホーン・セクションのための楽譜を書きました。ほんの2週間強ですから恐るべき早業です。

 また、先生がこのライヴに出演しないかと声を掛けたことからルース・アンダーウッドも参加しています。ホーン・セクションにはブレッカー兄弟も加わっていますから、このライヴでのザッパ・バンドはこの場限りの特別編成なのでした。貴重なライヴだったのです。

 このボーナスには他にも1988年の「ブロードウェイ・ザ・ハードウェイ」で初めて登場する「エニ・カインド・オブ・ペイン」が「パープル・ラグーン」の途中で出てきたりして驚かされます。さらに「ティティーズ・アンド・ビアーズ」が出来上がる過程も見えてきたりします。

 最後の5枚目はコンサート音源のミックス違いの他に、「ブラック・ぺージ」のピアノ・バージョンが収録されました。「ブラック・ぺージ」はもともとテリー・ボジオのためにこの時期に書かれたドラム曲で、譜面が真っ黒なほどに音符がつまっている難曲です。

 そのピアノ版は2曲あります。まずは先生自身の編曲をトミー・マーズが1978年に演奏したもの、もう一つはルース・アンダーウッドが自身で編曲したもので、これは本作品のために新たに録音されました。当時も先生が録音したそうですが、行方不明になっていました。

 ルースの演奏は本作品の大トリをつとめています。現代音楽風のピアノ演奏が、この長い長い作品を締めくくっていることで、しみじみとした余韻が残ります。ルースは文章も寄せており、先生の音楽への深い敬愛の念が感じられて素敵です。締めにふさわしい演奏でした。

Zappa in New York - 40th Anniversary Delux Edition / Frank Zappa (2019 Zappa) #112



Tracks:
(disc one - The Original 1977 Vinyl Mix)
01. Titties & Beer
02. I Promise Not To Come In Your Mouth
03. Big Leg Emma
04. Sofa
05. Manx Needs Women
06. The Black Page Drum Solo / Black Page #1
07. Black Page #2
08. Honey, Don't You Want A Man Like Me?
09. The Illinois Enema Bandit
10. The Purple Lagoon
(disc two - Bonus Concert Performances Part 1)
01. "The Most Important Musical Event Of 1976"
02. Peaches En Regalia
03. The Torture Never Stops
04. The Black Page #2
05. Punky's Whips Intro
06. Punky's Wihps
07. I Promise Not To Come In Your Mouth
08. Honey, Don't You Want A Man Like Me?
09. The Illinois Enema Bandit
10. "Two For The Price Of One"
11. Penis Dimension
12. Montana
(disc three - Bonus Concert Performances Part 2)
01. America Drinks
02. "Irate Phone Calls"
03. Sofa #2
04. "The Moment You've All Been Waiting For"
05. I'm The Slime
06. Pound For A Brown
07. Terry's Solo
08. The Black Page Drum Solo / Black Page #1
09. Big Lzeg Emma
10. "Jazz Buffs And Buff-etts"
11. The Purple Lagoon
12. Find Her Finer
13. The Origin Of Manx
14. Manx Needs Women
15. Chrissy Puked Twice
16. Cruisin' For Burgers
(disc four - Bonus Concert Performances Part 3)
01. The Purple Lagoon / Any Kind Of Pain
02. "The Greatest New Undiscovered Group In America"
03. Black Napkins
04. Dinah-Moe Humm
05. Finale
(disc five - Bonus Vault Content)
01. The Black Page #2 (Piano version)
02. I Promise Not To Come In Your Mouth (alternate version)
03. Chrissy Puked Twice
04. Cruisin' For Burgers (1977 mix)
05. Black Napkins
06. Punky's Whips (unused version)
07. The Black Page #1 (Piano version)

Personnel:
Frank Zappa : guitar, vocal
Ray White : guitar, vocal
Eddie Jobson : keyboards, violin, vocal
Patrick O'Hearn : bass, vocal
Terry Bozzio : drums, vocal
Ruth Underwood : percussion, synthesizer, various humanly impossible overdubs
Don Pardo : sophisticated narration
Davied Samuels : timpani, vibes
Randy Brecker : trumpet
Mike Brecker : tenor sax, flute
Lou Marini : alto sax, flute
Ronnie Cuber : baritone sax, clarinet
Tom Malone : trombone, trumpet, piccolo
***
John Bergamo : percussion overdubs
Ed Mann : percussion overdubs
Louanne Neill : osmotic harp overdub