ボズ・スキャッグスは2024年に80歳を目前にして来日し、東京、仙台、名古屋、大阪、福岡と全国各地でコンサートを行いました。特に東京では東京ドーム・シティー・ホールにて3日間連続で公演を行うなど、相変わらず高い人気を誇っています。感慨深いですね。

 本作品はボズが21歳の時にスウェーデンで制作した幻のソロ・デビュー・アルバム「ボズ」です。スウェーデンでのみ発売されていたもので、当時は300枚のみ発売されたこともあってマニアの垂涎の的だった作品で、一時は10万円を超える高値で取引されていました。

 2014年には日本やアメリカでCDとして再発されましたし、今ではサブスクでも聴けますけれども、相変わらず原盤は結構な高値で取引されている模様です。さすがはキャリアの長いスーパースターのお宝です。LPも復権していますし、ますます盛り上がっていることでしょう。

 ボズ・スキャッグスは1944年6月に米国オハイオ州で生まれています。その後、父親の仕事で米国内を転々としたボズはテキサスの地で運命の友スティーヴ・ミラーと出会います。二人は小学校から大学までを共に過ごし、共に音楽にのめり込んでいきます。

 ボズは本格的に音楽の道に進もうと大学を中退し、バンドを結成して1965年までには盛り上がっていたロンドンのシーンに身を投じます。しかし、成功は得られず、バンドが解散すると、路上で弾き語りをしながらヨーロッパをさすらうことになります。

 そして、その途上で立ち寄ったストックホルムにて本作品が制作されたのでした。どういう経緯があったのかは分かりませんが、路上で弾き語りをしているところをスカウトされたことは推測されます。この音源そのものも路上ライヴだとする説もあります。

 その説も頷ける形です。ここでは最初から最後まで、ボズは一人だけでアコースティック・ギターとハーモニカを用いた弾き語りを行っています。まさにボズの原点、裸のボズが記録されています。裸でも、若々しい声ながら、まごうことなき色っぽいボズの声です。

 収録されている曲はすべてカバー曲です。最も目を惹くのはボブ・ディランの「北国の少女」でしょうか。ディランのカバーで有名な「連れてってよ」に続いて演奏されているので、どうしてもディランの影を見てとることになります。歌い方などかなり似ています。

 スウェーデンでもおそらくはこのディラン2世的な姿が目に留まったのではないでしょうか。ボズは何といっても声がいいですし、歌手という点では確かにボズはディランに決してひけをとる人ではありません。後にアバを生むスウェーデンの目は確かでした。

 その他の楽曲では、オールマン・ブラザーズ・バンドも演奏した「ストーミー・マンデイ」、エルヴィス・プレスリーで有名な「ザッツ・オールライト」に「CCライダー」、後にスティーヴ・ミラーと一緒にカバーする「ギャングスター・オブ・ラヴ」などが嬉しいところです。

 ブルースからポップまで意外に幅広い曲が選ばれていますが、どちらも見事に歌いこなすボズです。さすがは偉大なボーカリストです。ノベルティのように扱っていましたが、どうしてどうしてなかなかの力作です。全盛期に再発していればヒットしたでしょうに。

Boz / Boz Scaggs (1965 Polydor)



Tracks:
01. Steamboat
02. Baby Let Me Follow You Down 連れてってよ
03. Girl From The North Country 北国の少女
04. You're So Fine
05. Got You On My Mind
06. That's All Right
07. Hey Baby
08. Gangster Of Love
09. Let The Good Times Roll
10. How Long
11. Stormy Monday Blues
12. C.C. Rider

Personnel:
Boz Scaggs : vocal, guitar, harmonica