フリクションは1995年に4枚目のスタジオ・アルバム「ゾーン・トリッパー」を発表し、さらに翌年にはそのリミックス・アルバムを発表しましたが、その年の暮れにライヴを行った後に活動を休止してしまいました。日本のロック史に残るバンドだけに残念なことでした。

 しかし、それから10年を経て、2006年に大復活を遂げます。しかも、オリジナル・メンバーを揃えた同窓会的な復活とはまるで違います。ここで復活したフリクションはベースとボーカルのレックの他にはドラムの中村達也が加わっているのみという、何とデュオです。

 久しくロックの最小ユニットはドラムとベースとギターの3人というのが通り相場でしたが、ここではベースとドラムの二人きりです。リズム・セクションとボーカルのみとはまた斬新です。フリクションの復活はこうした驚きが伴って事件性が増しました。

 中村は高校時代からザ・スターリンや原爆オナニーズ、スター・クラブなどで活躍したドラマーで、一般にはブランキー・ジェット・シティーの結成メンバーであることで知られています。そうしたバンド活動のかたわら、さまざまなミュージシャンとフリーセッションも行っています。

 フリクションとして活動する前にはジョン・ゾーンやビル・ラズウェルとのセッション・アルバムを発表するなどしており、レックと組むことに十分納得できるキャリアを積んできています。レックにとっても中村との出会いは運命を感じたものだったようです。

 本作品はその新生フリクションの初めての作品となるミニアルバムです。収録されているのは2曲の新曲と3曲のカバー曲です。カバーはイギー・ポップの「ロー・パワー」、ローリング・ストーンズの「ユー・ガット・ミー・ロッキング」、ジミ・ヘンドリクスの「ファイヤー」です。

 ストーンズの曲は比較的新しいのですが、それを差し引いてもロックの王道を行く曲ばかりです。それをフリクションの二人は有無を言わせずがんがん演奏しています。まさに突っ走るという表現がぴったりです。久しぶりにロックらしいロックを聴いた思いです。

 新曲は「ディーパーズ」と「メラメラ69」で、どちらもレックらしい、短いフレーズを並べた楽曲です。曲の作りは初期の頃とさほど変わりませんけれども、さすがに年輪を重ねて、レックの歌声はずいぶんと落ち着いているため、これまたロックらしい曲になっています。

 ギターが重ねられているようにも聴こえますが、これもベースなのだそうです。考えてみれば当たり前ではありますが、ベースはギターの一種であることを改めて実感しました。ここではずんずん低音を響かせるよりも、まるでギターのように切り裂くベースです。

 フリー・フォームな演奏ではなく、いずれの曲もリフが中心に座っています。これが実に爽快です。強力なサウンドが連打されることで、後ろからせかされるように心も体も前のめりになっていきます。旧世代のロックをとことんまで追求するとこうなるという見事なサウンドです。

 なお、レックによれば、ギタリストが必要ないというわけではなく、いつも探しているんだそうです。そんな姿勢もかっこいいですね。フリクションはいつだってかっこいい。10年経っても全くぶれずに前を向いて進んでいるフリクションです。いや、本当にかっこいい。

Deepers / Friction (2009 Trippin' Elephant)



Tracks:
01. Raw Power
02. Deepers
03. You Got Me Rocking
04. めらめら69
05. Fire

Personnel:
Reck : vocal, bass, guitar
中村達也 : drums, chorus
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Momo Kazuhiro : chorus