デビュー・アルバムから8か月、サザンオールスターズの2枚目のアルバム「10ナンバーズ・からっと」です。オリコン・チャートでは2位を記録し、1979年の日本レコード大賞ではベスト・アルバム賞を受賞しました。デビュー・アルバムの頃とは様変わりです。
「勝手にシンドバッド」で鮮烈なデビューを飾って以来、テレビでサザンを見ない日はないくらいでしたから、多忙を極めていたのでしょう。セカンド・シングルはレコード会社の大きなプレッシャーを受け、半ば軟禁状態で作られたそうです。「気分しだいで責めないで」とはまた。
この頃のサザンはコミック・バンド扱いでしたし、一発屋のように思われていました。正直に申し上げると、この曲を聴いた時にはやっぱりなと思ったものです。この曲もラテンテイストで「勝手にシンドバッド」路線をそのまま踏襲したような曲でしたし。
そこに三枚目のシングル曲として「いとしのエリー」が投下されました。レコード会社はこれに反対していたそうですが、アーティスト側の強い決意でシングル・カットされたといいます。結果は大正解、世間のサザンを見る目は一変し、真面目にその音楽に向き合い始めました。
この時のことはよく覚えています。オリコン・チャートでは2位どまりだったとは信じられませんが、ザ・ベストテンでは7週連続で1位を獲得しており、とにかく勢いがすごかった。「いとしのエリー」は後に「ふぞろいの林檎たち」の主題歌ともなり、永遠のスタンダードになりました。
本作品には続く「思い過ごしも恋のうち」を含め3曲のシングル曲を収録しています。それらの楽曲はデビュー作同様にサザンの奥深い音楽的な引き出しから生まれたバラエティ豊かなものですけれども、熱い胸騒ぎで一気に作り上げた前作とはやや雰囲気が違います。
多忙を極める中で作られたということもあり、本人たちにもじっくり腰を落ち着けて制作できなかったという反省がある模様です。確かにアルバムとしてのまとまりには欠けるきらいがあり、それぞれの曲がたまたま同居しているかのような後味が残ります。
とはいえ、それでともかくもこれだけの曲を揃えるのですから大したものです。軽いニューミュージック風に始まる最初の「お願いDJ」でも桑田佳祐によるウルフマン・ジャックのものまねが入ると途端にアメリカン・グラフィティ的な雰囲気が生まれてきます。
続くブルース調の「奥歯にを食いしばれ」は途中でレゲエ調に変わります。かと思うと「ラチェット通りのシスター」で淡い恋を描いてアメグラ調に戻ります。ラテン風味の4枚目のシングル「思い過ごしも恋のうち」をはさんで、ボードヴィル調の「アブダ・カ・ダブラ」となります。
「気分しだいで責めないで」もアルバム・バージョンはラテン全開のはちゃめちゃなものになっていますし、「レット・イット・ブギー」から「ブルースへようこそ」とサザンのロック愛がほとばしります。そして最後に「いとしのエリー」。ちょっとアルバムからは浮いています。
多くの人が本作品を歌謡曲調になってきたと評しています。それはおそらくサザンのごった煮感覚が、歌謡曲の本来もっているミクスチャー感覚に通じるからでしょう。特にシングルにみえるその本格的なラテン風味がそうでしょう。サザンは大衆音楽そのものです。
10 Number's Carat / Southern All Stars (1979 Invitation)
Tracks:
01. お願いDJ
02. 奥歯を食いしばれ
03. ラチエン通りのシスター
04. 思い過ごしも恋のうち
05. アブダ・カ・ダブラ(TYPE1)
06. アブダ・カ・ダブラ(TYPE2)
07. 気分しだいで責めないで
08. Let It Boogie
09. ブルースへようこそ
10. いとしのエリー
Personnel:
桑田佳祐 : vocal, guitar
大森隆志 : guitar, chorus
原由子 : keyboards, chorus
関口和之 : bass, chorus
松田弘 : drums, chorus
野沢秀行 : percussion, chorus
***
Horn Spectrum : horn
兼崎ドンペイ : trumpet, flugel horn
新田イチロー : trumpet, flugel horn, trombone
吉田トシユキ : trombone
清水靖晃 : tenor sax
Joe Strings : strings
妹尾隆一郎 : harmonica
薗田憲一&ディキシー・キングス・ホーン
「勝手にシンドバッド」で鮮烈なデビューを飾って以来、テレビでサザンを見ない日はないくらいでしたから、多忙を極めていたのでしょう。セカンド・シングルはレコード会社の大きなプレッシャーを受け、半ば軟禁状態で作られたそうです。「気分しだいで責めないで」とはまた。
この頃のサザンはコミック・バンド扱いでしたし、一発屋のように思われていました。正直に申し上げると、この曲を聴いた時にはやっぱりなと思ったものです。この曲もラテンテイストで「勝手にシンドバッド」路線をそのまま踏襲したような曲でしたし。
そこに三枚目のシングル曲として「いとしのエリー」が投下されました。レコード会社はこれに反対していたそうですが、アーティスト側の強い決意でシングル・カットされたといいます。結果は大正解、世間のサザンを見る目は一変し、真面目にその音楽に向き合い始めました。
この時のことはよく覚えています。オリコン・チャートでは2位どまりだったとは信じられませんが、ザ・ベストテンでは7週連続で1位を獲得しており、とにかく勢いがすごかった。「いとしのエリー」は後に「ふぞろいの林檎たち」の主題歌ともなり、永遠のスタンダードになりました。
本作品には続く「思い過ごしも恋のうち」を含め3曲のシングル曲を収録しています。それらの楽曲はデビュー作同様にサザンの奥深い音楽的な引き出しから生まれたバラエティ豊かなものですけれども、熱い胸騒ぎで一気に作り上げた前作とはやや雰囲気が違います。
多忙を極める中で作られたということもあり、本人たちにもじっくり腰を落ち着けて制作できなかったという反省がある模様です。確かにアルバムとしてのまとまりには欠けるきらいがあり、それぞれの曲がたまたま同居しているかのような後味が残ります。
とはいえ、それでともかくもこれだけの曲を揃えるのですから大したものです。軽いニューミュージック風に始まる最初の「お願いDJ」でも桑田佳祐によるウルフマン・ジャックのものまねが入ると途端にアメリカン・グラフィティ的な雰囲気が生まれてきます。
続くブルース調の「奥歯にを食いしばれ」は途中でレゲエ調に変わります。かと思うと「ラチェット通りのシスター」で淡い恋を描いてアメグラ調に戻ります。ラテン風味の4枚目のシングル「思い過ごしも恋のうち」をはさんで、ボードヴィル調の「アブダ・カ・ダブラ」となります。
「気分しだいで責めないで」もアルバム・バージョンはラテン全開のはちゃめちゃなものになっていますし、「レット・イット・ブギー」から「ブルースへようこそ」とサザンのロック愛がほとばしります。そして最後に「いとしのエリー」。ちょっとアルバムからは浮いています。
多くの人が本作品を歌謡曲調になってきたと評しています。それはおそらくサザンのごった煮感覚が、歌謡曲の本来もっているミクスチャー感覚に通じるからでしょう。特にシングルにみえるその本格的なラテン風味がそうでしょう。サザンは大衆音楽そのものです。
10 Number's Carat / Southern All Stars (1979 Invitation)
Tracks:
01. お願いDJ
02. 奥歯を食いしばれ
03. ラチエン通りのシスター
04. 思い過ごしも恋のうち
05. アブダ・カ・ダブラ(TYPE1)
06. アブダ・カ・ダブラ(TYPE2)
07. 気分しだいで責めないで
08. Let It Boogie
09. ブルースへようこそ
10. いとしのエリー
Personnel:
桑田佳祐 : vocal, guitar
大森隆志 : guitar, chorus
原由子 : keyboards, chorus
関口和之 : bass, chorus
松田弘 : drums, chorus
野沢秀行 : percussion, chorus
***
Horn Spectrum : horn
兼崎ドンペイ : trumpet, flugel horn
新田イチロー : trumpet, flugel horn, trombone
吉田トシユキ : trombone
清水靖晃 : tenor sax
Joe Strings : strings
妹尾隆一郎 : harmonica
薗田憲一&ディキシー・キングス・ホーン