もはやレーベルの言葉を引用するしかありません。本作品は「悪魔の沼、自主レーベルALLIGATORから新作到着!!2022年”FESTIVAL de FRUE 2022”グラスステージ、悪魔の沼3人+MOODMANを交えた特別編成4沼人(ぬまんど)による沼探りの記録」です。

 この悪魔の沼は2008年に結成されたDJ三人によるユニットです。その三人は、もともとコンピュー魔、A魔NO、Dr.NISHI魔RAと自称していましたが、ここでは魔をとってコンピューマ、アワノ(?)、ドクター・ニシムラとなっています。

 悪魔の沼で検索すると、「悪魔のいけにえ」で有名なトビー・フーパー監督の映画「悪魔の沼」が真っ先に引っ掛かりますが、このユニットはその映画の日本版VHSのジャケットに「勝手にインスパイアされて、ほわほわ~っとはじまった」イベントなのだそうです。

 彼らは「沼」というコンセプトを相当気に入った様子で、演奏会場を沼と称し、自身を沼人と呼んで嬉しそうです。前作ではマスタリングを沼スタリング、アートワークを沼ートワークと称していましたから徹底しています。魔はそれほどでもないのですかね。

 もともと下北沢のクラブMOREを沼地としていたのですが、「2013年より新たな試みとして、3人によるバック・スリー・バックなDJスタイルで予測不能な更なるネクストな沼世界を探っている」とされています。三人一緒にやるということなんですかね。

 本作品はゲストにムードマンを招いて、フェスティバル・デ・フルー2022のグラス・ステージにて行ったパフォーマンスを記録したCD-R作品「沼探り」です。ダウンロード・コードが封入されていて、そちらから追加音源を加えた2時間の演奏がダウンロードできます。

 フルーは2012年に始まった音楽祭で、コンセプトは「魂の震える音楽体験」、「ジャズ、ロック、ワールド、テクノ、電子音楽など、様々な音楽のジャンルの中から、強く、深い、そして濃い精神性を携えているミュージシャンを、世界各国から日本に招聘しています」。

 ムードマンは1980年代末にDJ活動を始めたベテランDJです。レコード収集家としても知られていますから、その意味でも沼人の資格は十分にあろうかと思います。ここでは悪魔の沼の三人ともはや不可分一体となって2時間ノンストップで音楽を奏でています。

 ここでは「電子音楽、ハウス、テクノ、ニューエイジ、ブレイクビーツ、インダストリアル、アシッド、エレクトロ、ディスコ、ワールド・ミュージック、、、こうした音楽たちが、全くもって不可分のドロっとサイケデリックでレフトフィールド、ずぶずぶな世界を拡張」していきます。

 ポイントは「幾分ダンスフロアにはスローなBPMを携えてゆっくりと進んでいく」ところにあります。途中でクラフトワークの「ヨーロッパ特急」がわりとそのまま出てくるところがありますけれどもそれが象徴的で、実に心地よいビートで懐かしめのサウンドが延々と続きます。

 彼らは「締めっぽく泥の深い地の事を沼地と呼ぶ。沼には野生動物が生息し、しばしば多種多様な動物の繁殖地となる」と沼愛を語っています。まさに、いろいろなものがどろどろに溶け合って、静かな沼の表を形作っているようなサウンドは心を平静にしてくれます。

Numa Saguri / Akuma no Numa with Moodman (2024 Alligator)



Tracks:
01. 沼探り

Personnel:
COMPUMA
Dr. NISHIMURA
AWANO
MOOD魔N