ブラック・サバスは1985年のライヴ・エイドに久しぶりにオリジナル・ラインナップで登場しました。会場を大いに沸かせましたけれども、この復活は一度限りで終わってしまいました。むしろバンドは混迷の度合いを深め、トニー・アイオミはバンドの活動停止を決めてしまいました。

 無理もありません。「悪魔の落とし子」を産んだイアン・ギランはディープ・パープル再結成のために脱退してしまい、新たなボーカリストは入れ替わり立ち替わりで居つきません。さらにオリジナル・メンバーのギーザー・バトラーが脱退するなど、バンドは混迷していたのです。

 とうとうアイオミはソロ・アルバムの制作にかかりました。集められたメンバーは、ボーカルに元ディープ・パープルのグレン・ヒューズ、後にキッスで活躍するドラムのエリック・シンガー、ベースにはほぼ新人のデイヴ・スピッツ、キーボードにはサバスと長いジェフ・ニコルズです。

 こうしてソロ・アルバム「セヴンス・スター」が完成します。ところが、レコード会社はソロ名義に難色を示し、本作品は結果的にブラック・サバス名義で発表されることになりました。正確にはブラック・サバス・フィーチャリング・トニー・アイオミです。アイオミの抵抗の後が見えます。

 ソロ・アルバムらしくヒューズの他にもボーカリストが起用される予定だったそうですが、結果的にはヒューズだけが参加しています。これが運の尽きです。想定されていたロニー・ジェイムス・ディオなど、大物が複数参加していればソロ作品とするしかなかったでしょうに。

 とんだとばっちりは参加ミュージシャンです。アイオミのソロにゲスト参加しているつもりだったのに、いつの間にやらブラック・サバスのメンバーになっていたわけですから。このサバスはアルバム発表後にツアーに出ましたが、ヒューズなどは早々に脱退します。

 閑話休題。アルバムはしばしばブラック・サバスの音楽スタイルから大きく変化したと言われます。アイオミのソロですから当然ですが、オジー・オズボーンのいないサバスを認めてしまった私たちには、これがサバスの作品とされても特に違和感があるわけではありません。

 それにアイオミという人はギター・ヒーローとして実績は十分なわけですが、三大ギタリストはいうまでもなく、リッチー・ブラックモアなどに比べてもいかんせん地味です。売る側のレコード会社としては、ここはブラック・サバス名義とすべきと判断するのは至極当然のことでしょう。

 サウンドはすかっとした気持ちの良いハード・ロックです。ディープ・パープルでは十分に発揮できなかったボーカリストとしての力量を印象付けるかのようなヒューズのボーカルがよく似合います。パワー・バラードも含めて、アイオミの曲作りもさえており、なかなか力作です。

 さすがはアイオミです。私などはアイオミのギターさえなっていればもうブラック・サバスだと思ってしまうものですから、この作品もサバスの王道そのものです。冒頭でがつんときめて、その後はじわじわと後半にいくにつれて盛り上がっていく様子がたまりません。

 しかし、商業的にはぱっとしませんでした。英国では27位、米国でも78位とサバスのアルバムにしては不調でした。ジャケットも地味でしたし、オカルト風味が消え去りましたし、サバスらしくないという声はわかるのですが、内容はなかなかの力作だけに残念です

Seventh Star / Black Sabbath featuring Tony Iommi (1986 Warner)



Tracks:
01. In For The Kill
02. No Stranger To Love
03. Turn To Stone
04. Sphinx (The Guardian)
05. Seventh Star
06. Danger Zone
07. Heart Like A Wheel
08. Angry Heart
09. In Memory...

Personnel:
Tony Iommi : guitar
Glenn Hughes : vocal
Eric Singer : drums
Dave "The Beast" Spitz : bass
Geoff Nicholls : keyboards
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Gordon Copley : bass