多くの人が待ち望んだアルバムでした。東京ロッカーズの中でも一際光り輝いていたフリクションによるファースト・アルバムです。PASSレコードから発表されたこのアルバムは日本のロック名作選には必ず名前を連ねる大名盤です。タイトルは「軋轢」、かっこいいです。
フリクションは洋楽コンプレックスに苛まれる日本のロック・キッズには天啓でした。「当時のロックって海の向こうからきているから向こうのほうがすごいって、思っちゃってるんだよ。なんとなく自分たちのほうが下だって思っている」のは私だけではありませんでした。
「それが向こうに住んだら、自分らのライヴをパティ・スミスが見に来たりするのね。で、そこにいるのを見て、普通の人っていうか一人の人間だっていうのがわかるわけ。別に変わらないんだなっていうのがわかると、リラックスした」とレックは語ります。
聴いている私たちもフリクションの音楽を聴いて、まるで同じように思うことが出来ました。このサウンドのクオリティーは凄いです。洋の東西の差など全くないことが体得されて、これ以降、洋楽コンプレックスはかなりの程度解消されることになりました。
フリクションのサウンドは、何と言ってもその強靭な意志に裏付けされたストイックな表現にその魅力があります。ロックの最小ユニットが放つ強力なビートと、アナーキーなギター、それに簡素な言葉がすべてを表わすボーカル。どれをとっても最高です。
東京ロッカーズで彼らと行動を共にしていた写真家地引雄一は「レックたちが一枚の写真、あるいはひとつの言葉を選ぶのに実に慎重なのに最初は驚いた。自分たちの意思を伝えるためには音楽だけでなくあらゆることにおいて曖昧さは許されないわけだ」と語ります。
ビジュアルもこの上なくカッコよかったです。モノクロームがこれほど似合う人たちもなかなかいません。モノクロは本人たちがストイックでないとだらしなくなるものですが、そこはストイックの極みのような人たちですから。あとはピンボケ。これもストイックでないとできない。
ところで、このアルバムは大手のトリオ・レコードから配給されたこと、坂本龍一がプロデュースに係わっていることから、インディーズ界からはやや冷たい目で見られました。特に教授のプロデュースの是非を巡っては今でも議論が絶えません。
私もレックのベースの音の処理の仕方には違和感を覚えた一人です。「東京ロッカーズ」などで聴かれるのは鋭角的な剃刀のようなベース音です。それがここではもこもこしていて、切れ味鋭いというよりは鈍器のようなベース・サウンドになっています。
当時のスタッフはシングルの出来に不満をもっており、是非ともプロにお願いしたいと言うことで、教授が起用されたようです。そう考えると辻褄は合います。音は格段にプロ仕様になっています。そして教授が持ち込んだのはダブでしょう。このベースはダブっぽい。
そういう風に事情を繰っていくと、これも一つの解だなと思います。まっちゃんの切れ味鋭いギター・サウンドと、PiLの「メタル・ボックス」を彷彿させるダブ・ベースの絡みは凄味が溢れています。賛否両論は名盤の証。日本のロック史の金字塔であることは間違いありません。
Friction / Friction (1980 PASS)
*2015年7月24日の記事を書き直しました。
参照:「パンク天国4」ドール増刊、「Street Kingdom」地引雄一(K&B)
Tracks:
01. A-Gas
02. Automatic Fru.
03. I Can Tell
04. 100 Nen
05. Crazy Dream
06. Cycle Dance
07. Cool Fool
08. No Thrill
09. Big-S
10. Out
Personnel:
Reck : vocal, bass, synthesizer, guitar
Tsunematsu Masatoshi : guitar
Chiko Hige : drums, alto sax
フリクションは洋楽コンプレックスに苛まれる日本のロック・キッズには天啓でした。「当時のロックって海の向こうからきているから向こうのほうがすごいって、思っちゃってるんだよ。なんとなく自分たちのほうが下だって思っている」のは私だけではありませんでした。
「それが向こうに住んだら、自分らのライヴをパティ・スミスが見に来たりするのね。で、そこにいるのを見て、普通の人っていうか一人の人間だっていうのがわかるわけ。別に変わらないんだなっていうのがわかると、リラックスした」とレックは語ります。
聴いている私たちもフリクションの音楽を聴いて、まるで同じように思うことが出来ました。このサウンドのクオリティーは凄いです。洋の東西の差など全くないことが体得されて、これ以降、洋楽コンプレックスはかなりの程度解消されることになりました。
フリクションのサウンドは、何と言ってもその強靭な意志に裏付けされたストイックな表現にその魅力があります。ロックの最小ユニットが放つ強力なビートと、アナーキーなギター、それに簡素な言葉がすべてを表わすボーカル。どれをとっても最高です。
東京ロッカーズで彼らと行動を共にしていた写真家地引雄一は「レックたちが一枚の写真、あるいはひとつの言葉を選ぶのに実に慎重なのに最初は驚いた。自分たちの意思を伝えるためには音楽だけでなくあらゆることにおいて曖昧さは許されないわけだ」と語ります。
ビジュアルもこの上なくカッコよかったです。モノクロームがこれほど似合う人たちもなかなかいません。モノクロは本人たちがストイックでないとだらしなくなるものですが、そこはストイックの極みのような人たちですから。あとはピンボケ。これもストイックでないとできない。
ところで、このアルバムは大手のトリオ・レコードから配給されたこと、坂本龍一がプロデュースに係わっていることから、インディーズ界からはやや冷たい目で見られました。特に教授のプロデュースの是非を巡っては今でも議論が絶えません。
私もレックのベースの音の処理の仕方には違和感を覚えた一人です。「東京ロッカーズ」などで聴かれるのは鋭角的な剃刀のようなベース音です。それがここではもこもこしていて、切れ味鋭いというよりは鈍器のようなベース・サウンドになっています。
当時のスタッフはシングルの出来に不満をもっており、是非ともプロにお願いしたいと言うことで、教授が起用されたようです。そう考えると辻褄は合います。音は格段にプロ仕様になっています。そして教授が持ち込んだのはダブでしょう。このベースはダブっぽい。
そういう風に事情を繰っていくと、これも一つの解だなと思います。まっちゃんの切れ味鋭いギター・サウンドと、PiLの「メタル・ボックス」を彷彿させるダブ・ベースの絡みは凄味が溢れています。賛否両論は名盤の証。日本のロック史の金字塔であることは間違いありません。
Friction / Friction (1980 PASS)
*2015年7月24日の記事を書き直しました。
参照:「パンク天国4」ドール増刊、「Street Kingdom」地引雄一(K&B)
Tracks:
01. A-Gas
02. Automatic Fru.
03. I Can Tell
04. 100 Nen
05. Crazy Dream
06. Cycle Dance
07. Cool Fool
08. No Thrill
09. Big-S
10. Out
Personnel:
Reck : vocal, bass, synthesizer, guitar
Tsunematsu Masatoshi : guitar
Chiko Hige : drums, alto sax