ブラック・サバスの約2年ぶりのアルバム「ネヴァー・セイ・ダイ」です。結果的にオリジナル・ラインナップ最後のアルバムになってしまったという残念な事情で知られています。今回もやはりアルバム制作に向けてサバス内はごたごたしています。もはや恒例ですね。

 前作をサポートするツアーは1976年11月から半年にわたって行われました。この時のオープニングは米国ではボストンやテッド・ニュージェント、ヨーロッパではAC/DCと振り返れば豪華なメンバーです。いかにサバスの人気が高かったかわかります。

 ところが、ツアーを終えてアルバム制作にかかろうとした途端、突然オジー・オズボーンがサバスを抜けてしまいます。何といってもサバスの顔ですから、これは大きい。しかし、トニー・アイオミは冷静です。すぐに次のボーカリスト、デイヴ・ウォーカーを引き入れました。

 新生サバスは曲を書き進めるとともに、一度ですがライヴ演奏も行いました。しかし、ここで驚くべきことが起こります。ソロとしての活動を開始しようとしていたオジーがブラック・サバスに復帰することになったのです。元フリートウッド・マックのウォーカーこそいい面の皮です。

 本作品は、こうしてオリジナル・ラインナップに戻ったブラック・サバスによって制作されました。この際、オジーはウォーカー時代に書いていた曲を歌うことを拒否しており、バンドはスタジオ入りするに際して行っていた準備のほとんどを放棄せざるを得ませんでした。

 気分の問題というだけではなくて、路線の対立もあったのでしょう。戻ったとはいえ、一旦は脱退を決めたオジーは、やはり初期のヘヴィでオカルトなブラック・サバスを求めていたようですし、残ったメンバーはより音楽の幅を広げていくことを考えていたということのようです。

 オリジナル・ラインナップでの再出発はやはりフレッシュに行きたいとしてリセットされはしたものの、未練は残り、たとえば「ジュニアーズ・アイズ」はウォーカー時代の曲ですが、歌詞が変更されたのみで、本作品に採用されました。これは本当にいい曲ですからね。

 新曲であっても、ホーンを大胆に導入した「ブレイクアウト」は、オジーがボーカルを拒否したためにインストゥルメンタルになりましたし、「スウィンギング・ザ・チェイン」はオジーっぽい曲ではありますが、ビル・ウォードがボーカルをとっているなど、ごたごたが垣間見えます。

 とまあこのような状況で制作されたアルバムですから、メンバーからの評判はよろしくありません。さらにブラック・サバスらしくないとして評論家筋の受けもよくありませんでした。商業的にも英国では12位、米国では69位と彼らにしては残念な結果に終わりました。

 しかし、サバス原理主義者でない私などからすれば、70年代のハード・ロックの粋が詰まったいい作品だと思います。ゲスト参加しているドン・エイリーの華麗なキーボードが添える色に呼応するかのように、アイオミのギターもさまざまな種類の花を咲かせています。

 オジーのボーカルも落ち着いて風格を感じます。ヒプノシスによるジャケットはいかがなものかと思いますけれども、ブラック・サバスはブラック・サバス、ポップに流れすぎることなく、しっかりとハード・ロックの王道を歩んでいます。パンクにも揺るがないサバスでした。

Never Say Die! / Black Sabbath (1978 Vertigo)



Tracks:
01. Never Say Die
02. Johnny Blade
03. Junior's Eyes
04. A Hard Road
05. Shock Wave
06. Air Dance
07. Over To You
08. Breakout
09. Swinging The Chain

Personnel:
Tony Iommi : guitar, chorus
Ozzy Osbourne : vocal
Geezer Butler : bass, chorus
Bill Ward : drums, vocal
***
Don Airey : keyboards
Jon Elstar : harmonica
Wil Malone : brass arrangements