アリアナ・グランデの7作目のアルバム「エターナル・サンシャイン」です。前作から約3年半ぶりの発表です。もはや忘れてしまいそうですが、3年半前の前作はコロナ禍での制作だったという特殊事情があったんですね。その意味では常態に戻った作品といえます。

 この間、グランデは映画「ウィキッド」に注力しており、それが終わるまでは特に音楽を作るつもりはなかったそうです。映画はまだ終わっていませんが、プロデューサーのマックス・マーチンが遊びに来て、スタジオで時間を過ごすようになると本作品が自然にできたそうです。

 そう聞くと、軽く作ったカジュアルな作品のように思ってしまいますが、本作品はしっかりとした重めのアルバムです。唯一、40分に満たないというアルバムの短さにそうした事情を感じないではありませんが、アルバムの完成度には何ら影響していません。むしろちょうどよい。

 アルバム・タイトルは2004年の映画「エターナル・サンシャイン」から採られています。ジム・キャリーとケイト・ウィンスレットが主演した映画で、喧嘩別れした二人がお互い相手に対する記憶を除去する手術を受けるお話です。グランデはこの映画が大好きなんだそうです。

 グランデは、本作品を「今までやったことのないコンセプトのある作品です」と語っています。「知らぬが仏」という皮肉になっているという映画にからめて、「永遠の光があると同時に、」、「たくさんの痛み」をのせたアルバムを作ったのだということです。

 今回のアルバムではフィーチャリング・アーティストはいません。唯一の例外はノンナ、グランデのおばあさんです。最後の曲「オーディナリー・シングス」の最後で、毅然とした語りをきめています。♪もしキスするのが気まずいなら・・・まちがった関係だね・・・ゲットアウト!♪

 もう一人、フィーチャリングの記載はありませんが、「インタールード」において星占い師のダイアナ・ガーランドが土星回帰を語っています。土星回帰は占星術において人生の大きな転機ととらえられており、グランデもこれを経験したことが本作品に影響を与えています。

 「以前はポップスターとしてのAriが90%を占めていましたが」、今は「99%が人間としてのAriでいられているし、それが本当に素敵なことです」と語る背景には30歳になったことと土星回帰がなにがしかのきっかけとなっている模様です。

 サウンドの方は、お馴染みのマーチンを中心にイリヤ・サルマンザデを始めとする数名がプロデュースしており、基本的には少ない音数でグランデのいつも以上にパーソナルなタッチのボーカルを引き立たせています。何から何までほどよい具合がいいです。

 アルバムからの先行シングルは♪そうだけど、何?♪とグランデらしい見事な啖呵がきまっている「イエス、アンド?」で、当然のごとく全米初登場一位を獲得しています。しかし、このダンス・チューンはアルバムでは例外的で、作品全体は落ち着いた美しさに満ちています。

 グランデの歌声はますます伸びやかで美しく、アルバムから受けるどっしりした印象をより深めています。まだ30歳のグランデ、本作品では土星回帰を経て、一回りも二回りも人間的な深みを増したようです。ポップ・アイコンなどと軽々しく呼べないアーティストです。

Eternal Sunshine / Ariana Grande (2024 Republic)

参照:アリアナ・グランデ、新作『eternal sunshine』発売開始。本人が語るこの作品の内容とは?(udiscovermusic.jp 2024/3/8) 



Tracks:
01. Intro (End Of The World)
02. Bye
03. Don't Wanna Break Up Again
04. Saturn Returns Interlude
05. Eternal Sunshine
06. Supernatural
07. True Story
08. The Boy Is Mine
09. Yes, And?
10. We Can't Be Friends (Wait For Your Love)
11. I Wish I Hated You
12. Imperfect For You
13. Ordinary Things

Personnel:
Ariana Grande : vocal
***
Nonna : voice
Max Martin, Ilya Salmanzadeh, Shintaro Yasuda, Nick Lee, Aaron Parts, Will Loftis, Davidior, Peter Kahm, Luka Kloser: production