プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ、PFMのセカンド・アルバム「友よ」です。デビュー作となる「幻想物語」から1年足らずで発表されました。デビュー作以降も精力的にツアーをこなしていたといいますから、この時期の旺盛な創作意欲が分かります。

 この作品も「幻想物語」と同じくキング・レコードのヨーロピアン・ロック・コレクションの一枚として発売されるまで、少なくとも私は聴いたことがありませんでした。思えば同コレクションは1988年、アルバム発表から16年、それだけPFMの人気が根強かったということです。

 PFMにEL&Pのグレッグ・レイクが興味を示して、PFMがマンティコア・レーベルから国際展開するのは本作品の翌年のことです。その世界デビュー作「幻の映像」は、基本的には本作品のリメイクです。その点でもこの作品は大きな意味を持っているといえます。

 本作品には5曲が収録されており、その全曲が「幻の映像」に収録されています。私は新たに演奏したバージョンだとばかり思っていたのですが、新たにピート・シンフィールドが書き下ろした英語詞を歌うボーカル以外は必ずしも新たな演奏ではないようです。

 そういえば「幻の映像」ではピート・シンフィールドの役割がプロデュースではなく、リミックスとされていた部分が大きかった。曲の長さも微妙に異なりますし、全く同じというわけではないのですが、基本的な部分は同じです。ロック先進国の薫陶もそこまで強くないわけです。

 前作の荒々しいミックスは「幻の映像」と比較すると際立つなと思っていたのですが、もとの「友よ」が前作よりも「幻の映像」寄りだとは思ってもみませんでした。初めて聴いた時には驚いたものです。PFMはすでに意識的に国外に目を向けていたのでした。

 実は本作品はイタリアのヒットチャートの成績は今一つでした。最高位は13位と前作を大きく下回っていますし、持続力にも乏しく、ベスト20圏内にとどまったのもわずか6週というありさまでした。イタリアのローカル色を薄くした代償だったのでしょう。

 そこにマンティコアとの契約話が持ち上がったのですから、狙いは過たずといったところです。それも本作品発売直後のことです。契約がまとまると話は早く、数か月後には「幻の映像」が発売されています。なお、こちらはイタリアではチャート入りしていません。

 「幻の映像」がすでに「友よ」で完成していたことが分かると、次は歌詞は英語かイタリア語かどちらがよいのかという話になります。日本では日本語でロックができるか論争がありましたが、イタリアではどうだったんでしょうか。問題なさそうに聴こえますが。

 「幻の映像」が傑作なのですから、「友よ」も傑作に決まっています。曲のタイトルは全く異なっていますけれども、いずれも馴染みのある曲ばかり、「ほんの少しだけ」は「人生は川のようなもの」ですし、「友よ」は「幻の映像」とタイトル・クイズも楽しいです。

 「幻想物語」に比べると格段に洗練されたサウンドになっており、PFMの世界進出序章として申し分ない作品になっています。その分、ローカル感が少し薄れていますが、地中海エスニックは依然そこはかとなく流れています。これもPFMの傑作に違いありません。

Per Un Amico / Premiata Forneria Marconi (1972 Numero Uno)



Tracks:
01. Appena Un Po' ほんの少しだけ
02. Generale 生誕
03. Per Un Amico 友よ
04. Il Banchetto 晩餐会
05. Geranio ゼラニウム

Personnel:
Franco Mussida : guitar, mandocello, theorbo, vocal
Flavio Premoli : organ, piano, Mellotron, harpsichord, minimoog, spinet, tubular bells, vocal
Mauro Pagani : flute, piccolo, violin, vocal
Giorgio Piazza : bass, vocal
Franz Di Cioccio : drums, percussion, vocal