順風満帆な航跡を描いてきたウォーにレーベル移籍話が持ち上がります。それがきっかけとなって、とりあえず「グレイテスト・ヒッツ」を制作することになりました。「シスコ・キッド」や「ロウ・ライダー」などのシングル・ヒット曲満載のアルバムはもちろん大ヒットしました。

 しかし、ウォーの魅力はそれだけではないのだということで、彼らは裏グレイテスト・ヒッツを企画します。バンドの原点に立ち返って、フリー・フォームなグループ・インプロヴィゼーション主体のジャム・セッションを聴いてもらおうという企画です。

 この頃、ジャズの名門ブルー・ノートからアルバム制作のオファーを受けていたウォーは、ここに裏グレイテスト・ヒッツを合わせることとし、未発表曲と既発曲を組み合わせた2枚組のアルバムを制作しました。それがこの「プラチナム・ジャズ」です。

 なお、英国では既発曲を除いてシングル・アルバムとして発売されました。「プラチナ・ファンク」がそのタイトルです。日本では無事に2枚組が発売されましたが、なぜか邦題は「プラチナ・ファンク」でした。ジャズと題するとイメージにそぐわないと思ったのでしょう。

 しかし、この作品はブルー・ノートからの発売ということもあって、米国ではジャズ・チャートで1位になる快挙を達成しました。ブルー・ノート初のプラチナ・アルバムにもなりました。この作品でウォーはジャズ・ファンまで獲得したということです。

 本作品の新曲は6曲、そのうち「ウォー・イズ・カミング」と「スロウリー・ウィ・ウォーク・トゥゲザー」の2曲はアーカイブからです。前者は典型的なファンク・ロック・チューンで、後者はため息がでるほど美しいバラードです。いずれ劣らぬ名曲です。

 「プラチナム・ジャズ」「アイ・ガット・ユー」「ニジェール川」の3曲はLAを舞台にした映画「ニジェール川」にサウンドトラックとしてウォーが提供した楽曲です。アルバムからの唯一のシングル「LAサンシャイン」は出自が分かりません。新曲でしょうか。

 いずれも新録音という説もあって判然としませんが、ウォーの新作と言っても全く違和感のない充実ぶりです。前作ほどのラテン感はなくて、落ち着いた素晴らしい楽曲ばかりです。確かにウォー本来のジャム演奏によるグルーヴ感にあふれています。

 問題は既発表曲です。当初の意図通り、グレイテスト・ヒッツには入らないジャム的なインスト曲中心の選曲ではあります。しかし、全6曲、いずれも編集されて全部で15分も短くされています。そのためにどこか食い足りない思いが残ります。

 いずれ劣らぬ名曲ばかりですし、並び順も考えられているので、とても気持ちがよいのですが、これではちょっと足りない。ユナイテッド・アーティストの意向らしいです。レーベル移籍途上もあっての嫌がらせでしょうか。オリジナルでの使用はまかりならぬと。

 そんな欠陥はありますが、ウォーの「オリジナル・アフロ・キューバン・ジャズ・ロック・ブルース・バンド」としての魅力が十分に伝わるいい作品です。この後、ディスコの全盛とともに急速に失速してしまうウォーですが、結局は彼らのこの音楽は時代を越えることになりました。

Platinum Jazz / War (1977 Blue Note)

*2015年9月21日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. War Is Coming! War Is Coming!
02. Slowly We Walk Together
03. Platinum Jazz
04. I Got You
05. L.A. Sunshine
06. River Niger
07. H2 Overture
08. City, Country, City
09. Smile Happy
10. Deliver The Word
11. Nappy Head (Theme from "Ghetto Man")
12. Four Cornered Room

Personnel:
Howard Scott : guitar, percussion, vocal
B.B. Dickerson : bass, percussion, vocal
Lonnie Jordan : organ, piano, timbales, percussion, vocal
Harold Brown : drums, percussion, vocal
Papa Dee Allen : conga, bongo, percussion, vocal
Charles Miller : flute, clarinet, alto, tenor & baritone sax, percussion, vocal
Lee Oskar : harmonica, percussion, vocal