ローリング・ストーンズの「全公式録音を年代順に収録した大河アンソロジー」、「コンプリート・ストーンズ第六集」です。今回のジャケットはステージの模様です。ミック・ジャガーやキース・リチャーズはトレーナーのような服を着ており、リラックスした様子が伺えます。

 第六集には1965年5月から10月の公式録音が収録されました。この時期は「世界が揺れた!遂に『サティスファクション』発売。ロック誕生。」とエポック・メイキングとなった時期にあたります。「サティスファクション」の誕生はロック史に太字で記載される事件です。

 さて、アルバムは3度目の全米ツアーの最中に行われた録音から始まります。もはや全米ツアーでの楽曲収録は恒例になっています。今回も5月10日にシカゴのチェス・スタジオ、11日、12日にはハリウッドのRCAスタジオという強行軍での録音が敢行されました。

 チェスで4曲、RCAで6曲の録音が収録されています。「サティスファクション」はチェスでも試されたそうですが、結局はこのRCAでの録音がシングルとして発売されることになりました。米国での発売は6月4日です。録音してから1か月未満の早業です。

 ここでの10曲のうち8曲が米国版「アウト・オブ・アワー・ヘッド」に収録されました。残る2曲はジェームズ・ブラウンの「トライ・ミー」とオーティス・レディングの「愛しすぎて」で、前者は未発表、後者は疑似ライヴとして米国版「ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット」収録です。

 「アウト・オブ・アワー・ヘッド」は7月に米国でめでたく発売になりました。しかし、英国盤はシングル曲を収録しない方針だったため、米盤収録の「サティスファクション」とそのB面「クモとハエ」に代わる楽曲が必要となって、発売が遅れてしまいます。

 ここで一息。続くのはアンドリュー・オールダムのイミディエイト・レコード用に、ストーンズがエリック・クラプトンとジミー・ペイジとセッションした音源です。1971年に発表された「クラプトン、ベック、ペイジ・アンド・アザーズ」に収録されました。オールダムの商売根性が凄い。

 さて、ストーンズはまたまた全米ツアーに出かけます。ここでも9月にRCAスタジオで収録が行われます。全部で6曲の収録で、中で特筆すべきは「サティスファクション」に続くシングルで、初めて英米双方で1位を獲得した「一人ぼっちの世界」です。

 英国では「サティスファクション」は米国に遅れること約3か月で発売されています。「「アウト・オブ・アワー・ヘッド」も9月のセッションからの楽曲2曲を得て、ようやく9月に発売されました。仕事のペースが速すぎて追いかけるのが大変ですね。

 オールダムはそれでもシングルが足りないと、10月にはマリアンヌ・フェイスフルへの提供曲「涙あふれて」のストーンズ版を収録させます。これは大当たりでした。この辺の嗅覚は恐ろしいものがあります。敏腕マネージャーの面目躍如です。

 続く収録はクリス・ファーロウなる歌手のセッションです。新会社によるプロモーションです。さらにボートラ収録でEP「ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット」を丸ごと収録して、この大変に忙しかった1965年の中盤が終わります。とても忙しいアルバムでした。

The Complete Stones #6 / The Rolling Stones (2024 Eternal Grooves)



Tracks:
01. Mercy Mercy
02. That's How Strong My Love Is
03. The Under Assistant West Coast Promotion Man ウエスト・コーストの宣伝屋
04. Try Me
05. (I Can't Get No) Satisfaction
06. The Spider And The Fly
07. One More Try
08. Good Times
09. I've Been Loving You Too Long 愛しすぎて「
10. Cry To Me
11. Draggin' My Tail
12. West Coast Idea
13. Get Off Of My Cloud 一人ぼっちの世界
14. She Said Yeah
15. Talkin' 'Bout You
16. The Singer Not The Song
17. Gotta Get Away
18. I'm Free
19. As Tears Go By
20. In The Midnight Hour
21. (I Can't Get No) Satisfaction
22. We Want The Stones
23. Everybody Needs Somebody To Love
24. Pain In My Heart
25. Route 66
26. I'm Moving On
27. I'm Alright

Personnel:
Mick Jaggar : vocal, harmonica, tambourine
Keith Richards : guitar, chorus
Brian Jones : guitar, organ, harmonica
Bill Wyman : bass
Charlie Watts : drums
***
Ian Stewart : piano, organ, marimba
Jack Nitzsche : tambourine, organ
Eric Clapton : guitar
Jimmy Page : guitar
Chris winters : drums
James W. Alexander : tambourine
Chris Farlowe : vocal