ウォーの初めてのライヴ・アルバム、その名も「狂熱のライブ」です。原題はシンプルに「ウォー・ライヴ」なのですが、1970年代初めの頃のライヴ・アルバムには狂熱とか狂乱とか怒涛とか、ライヴの盛り上がりを表す熟語が邦題に添えられていたものです。

 レコード会社には内部基準があったのでしょうかね。拍手の大きさを始めとする観客の盛り上がりぶりをもとに、「これは狂乱とまではいかず、狂熱どまりだ」とか。このライヴ盤では観客席からの音声は比較的抑えめにされています。演奏をじっくり聴かせる仕様です。

 本作品は1973年に発表されています。ライヴ自体は1972年11月にシカゴで行われています。4日間にわたるライヴでしたが、本作品はそのうちの一夜でとられた模様です。アルバムはLP2枚組ですが、80分に満たないやや短めの尺に収められています。

 ライヴが行われた時期はちょうどウォーの大ベストセラー「世界はゲットーだ」が発売された時期にあたります。同アルバムからは後に大ヒットする「シスコ・キッド」が演奏されて大いに盛り上がっています。ライヴのキラー・チューンですからね。

 アルバムはシカゴのラジオ局のDJによる紹介で始まります。続いて、ファースト・アルバムから「サン・オー・サン」が10分強の長尺バージョンで演奏され、「シスコ・キッド」につながっていきます。ここでの「シスコ・キッド」は比較的コンパクトに演奏されています。

 続いて、この時点ではウォー単体として最大のシングル・ヒットとなっていた「スリッピン・イントゥ・ダークネス」が登場します。A面の最後にほんの少しだけさわりが出てきて、B面にひっくり返すと、ここを全面使って壮大なジャム演奏が行われます。

 B面は前半と後半に分かれ、後半は「スリッピン・パート2」として独立した溝が刻まれています。ドラム・ソロも含む20分近い演奏にウォーのライヴらしさが表れていますけれども、この曲は実はさほどライヴ向きでもないような気がします。突っ走る感じでもない。

 二枚目に移ると、2枚目のアルバムから「オール・デイ・ミュージック」が登場して、一転してクールダウンした柔らかなサウンドが流れてきます。ここに続くのが未発表曲の「バレロ」で、8分半の演奏は編集してシングル・カットもされました。トップ40ヒットになっています。

 ファースト・アルバムからの短めの曲「ロンリー・フィーリン」を挟んで、いよいよアルバムの白眉ともいえる「ゲット・ダウン」に突入します。これまたC面最後にさわりを置いて、D面全部を使ったジャム演奏が繰り広げられます。1枚目と韻を踏んだかのような仕様です。

 スタジオ盤ではわずか4分半の曲でしたが、ここでは20分を超える狂熱です。とはいえ、音数は少なく、どっしりとしたリズムを中心にしたクールな手触りの演奏です。全員でどしゃどしゃ演奏するというよりも、比較的すき間が多い。そこが少し意外ではあります。

 私は再結成されたウォーの来日公演を見ているのですが、その時の濃密な演奏に比べると、格段にクールな演奏なので少し驚きました。録音の問題が大きいのではないかと推測しますが、ライヴ的なスタジオ・アルバムとあまり差がないという面白いライヴです。

War Live / War (1973 United Artists)



Tracks:
01. Introduction by E. Rodney Jones Of Radio Station WVON, Chicago, III
02. Sun Oh Son
03. The Cisco Kid
04. Slippin' Into Darkness
05. Slippin' Part 2
06. All Day Music
07. Ballero
08. Lonely Feelin'
09. Get Down

Personnel:
Howard Scott
B.B. Dickerson
Lonnie Jordan
Harold Brown
Papa Dee Allen
Charles Miller
Lee Oskar