花園ディスタンスは「2009年香川県で結成」、「2013年~東京で活動」するガールズアヴァンポップトリオです。本作品は結成15周年に発表された3枚目のアルバム「十五」です。なお彼女たちは8年目には「八」を発表しています。次は何年でしょうか。

 メンバーはキーボードと「ピアニカパンダ」に岡田ぴサス、ベースとシンセに「かじ」、ドラムにミ兵chiの三人です。この名前表記はなんとかならんかなぁ。ドラムに至っては、これでハマチと読ませます。何としても単語登録させようという魂胆でしょうか。

 公式サイトにて、花園ディスタンスは自分たちのことを「香川県高松発 脳死の主語なしアンサンブル」と表現しています。意味不明ではありますが、花園ディスタンスの音楽を聴くと、何となく腑に落ちるところがあるから不思議です。変な人たちです。

 さすがにこうした表現ではアルバムは売れないと判断したのか、販売元であるアルカンジェロでは、本作品を「アクサク・マブールのような欧州レコメンサウンドを現代にアップデートした変拍子と不思議なメロディが光る唯一無二のアヴァンポップワールド!」としています。

 そうして、レコメンデッド・レコードの創始者でもある元ヘンリー・カウのクリス・カトラーに作品へのコメントをもらっています。カトラーは「力強くクリアな音、そして巧みな演奏。新たな世代のピュアでミニマルなスタイル。とっ散らかる中の豊かな表現。」をここにみています。

 そうして「かつて私たちが築いたスタイルが、若者の手により育まれていく。私は、花園distanceの才能を高く評価し、彼女たちの幸運を祈っている。」と結びます。カトラーに後継者認定されているわけですから、これはもうレコメン系に太鼓判です。

 それが本人たちにとって嬉しいことなのかどうかは分かりませんが、プログレ界は先達へのリスペクトに満ち溢れていますから、花園ディスタンスへの注目はいや増しに増そうというものです。私も日本のスラップ・ハッピーとの噂を聞いて、彼女たちに興味が湧きました。

 アルバムには全部で7曲収録されています。基本はインストゥルメンタルですが、ボーカル曲が1曲だけあります。「タコとイカ」がそれなのですが、これもがっつり歌入りという感じではなく、♪なんとかならんかなぁ♪から始まる緩い曲です。

 乾いた言葉が、敬愛するCASIOトルコ温泉を思わせます。ガールズ・バンドにはこうした生活トリビア的な超然とした歌が多い気がします。このボーカル曲でアルバム全体を覆うサウンドの緊張感が緩和されるようになっており、構成の妙を感じました。

 インストゥルメンタル曲は、音数が少なく、力強いドラムとぶんぶんなる太いベース、すき間を縫うようにきらきらと輝くシンセや鍵盤ハーモニカのアンサンブルが美しいです。汗がとびちったりしないクールなサウンドは確かにレコメン系につながるものがあります。

 若干、短めなのが玉に瑕ですけれども、確かなテクニックに裏打ちされたどっしりしたサウンドがとてもかっこいいです。特典として「なんとかならんかな団扇」が添付されており、花園ディスタンスのサウンドが納涼にぴったりだということを再認識しました。素敵なバンドです。

Fifteen / Hanazono Distance (2024 Arcangelo)



Tracks:
01. 雨とめたい
02. 新曲
03. タコとイカ
04. わっしょい
05. つり
06. 正月
07. コマちゃん

Personnel:
岡田ぴサス : keyboards, ピアニカパンダ
かじ : bass synthesizer
ミ兵chi : drums