ウォーの快進撃が始まりました。「オール・デイ・ミュージック」はウォーの単独名義第二作にあたる作品で、前作からわずか7か月後に発表されたものです。この作品は、発表後からじわじわと売れ続け、全米トップ10に入る大ヒットになりました。

 実に39週間にわたってチャート・インするというロング・セラーで、年間チャートの順位でもかなり上位に来ていたはずです。派手な売れ方ではありませんでしたが、その広がり具合はかなりなものです。結局、プラチナ・ディスクを獲得しています。

 前作がぱっとしなかったことから、まずはラジオでかかるシングルを作ってみようということになりました。その結果、アルバムに先行する形で発表されたのがタイトル曲です。これがうまく成功し、35位まで上がるまずまずの成績を記録します。

 さらにウォーの人気に火をつけたのは、次にシングル・カットされたアルバム収録曲「スリッピン・イントゥ・ダークネス」です。この曲はとてもシングル向きの曲とは思えませんけれども、タイトル曲を上回る16位まで上がるヒットとなっています。面白いものです。

 レーベル側はシングル・ヒットを狙うために外部のソングライターを使うよう要請したようですが、これにはウォーとプロデューサーのジェリー・ゴールドスタインが猛反対します。そのため、このアルバムをゴールドにしないと大変なことになると背水の陣を敷くことになりました。

 そうなると傑作が生まれるものです。前作に比べると音の骨格は変わっていないのですが、メンバーが前作でスタジオ録音を学んだことも大きいのでしょう、格段にまとまりのあるアルバムになっています。とにもかくにもシングル・ヒットも生まれましたし。

 ウォーはメンバー7人全員がボーカルをとります。リードもそれぞれがとりますが、何と言ってもボーカル・ハーモニーが素晴らしいです。タイトル曲はそのボーカル・ハーモニーを生かしたメロウなファンク・チューンです。洗練された美しい曲なので、ちょっと驚きました。

 さらにメンバー全員にパーカッションのクレジットがあります。いかにもジャム・バンドらしく、ライブでは他の人のソロの時にも何かしらがさがさやっているということだと理解します。常に全員でプレイするバンドなんですね。その空気感がとても良いです。

 本作品の最後の曲「ベイビー・ブラザー」はライブ録音です。1971年6月のハリウッド・ボウルでの演奏です。この曲は、後に「ミー・アンド・ベイビー・ブラザー」として大ヒットする曲ですが、ここではそのプロトタイプが聴かれます。楽しげな演奏ぶりが何とも言えません。

 タイトル曲は長い長いジャム・セッションを録音したものから一部を切り出したのだそうです。一方、「スリッピン・イントゥ・ダークネス」はジャム・セッションを編集して曲を作りだしたということです。5日間かかったとはゴールドスタインの弁です。

 ウォーの曲作りの典型です。このアルバムでその手法が完成し、ウォー本来のパワーがそのままスタジオ録音作品に刻み込まれることになりました。豊かなニュアンスに富んだサウンドのテクスチャーはジャム・セッションならではです。目から鱗の傑作だと言えます。

All Day Music / War (1971 United Artists)

*2015年9月13日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. All Day Music
02. Get Down
03. That's What Love Will Do
04. There Must Be A Reason
05. Nappy Head (Theme From Ghetto Man)
06. Slippin' Into Darkness
07. Baby Brother

Personnel:
Howard Scott : guitar, percussion, vocal
B.B. Dickerson : bass, percussion, vocal
Lonnie Jordan : organ, piano, percussion, vocal
Harold Brown : drums, percussion, vocal
Papa Dee Allen : conga, bongo, percussion, vocal
Charles Miller : flute, alto, tenor & baritone sax, percussion, vocal
Lee Oskar : harmonica, percussion, vocal