レインボーの7作目のスタジオ・アルバム「ストリート・オブ・ドリームス」です。これまた邦題は本作品からのシングル・ヒット曲の曲名があてられました。原題は「ベント・アウト・オブ・シェイプ」、「憤慨した!」といった意味のアメリカンな成句です。

 怒りを表現したようなアルバムにも思えませんし、キャッチーな曲が満載なことからすれば代表シングル曲を邦題に選んだことも十分に理解できます。本作品も前作、前々作に引き続いて、ヒット・チャート・フレンドリーなパワー・ポップ・アルバムです。

 さて、恒例のメンバー・チェックです。今回もまた伝統にしたがい、メンバー・チェンジがありました。ドラマーが前二作に参加していたボビー・ロンディネリからチャック・バーギに交代しました。彼はまだ若いですが超絶技巧で知られたブランドXでドラムを叩いていた人です。

 前作を発表した頃には、水面下でディープ・パープルの再結成話が進行していました。すでにリッチー・ブラックモアとロジャー・グローヴァーは同意していたそうですけれども、意外に話は難航したようで、しびれを切らした二人がレインボーとして本作品を作ったそうです。

 なんだか他のメンバーに失礼な話ですけれども、いかにもレインボーらしい話です。かといって、レインボーは決してブラックモアのワンマン・バンドとは言えないところがさらに面白い。本作品でもジョー・リン・ターナーを始め、リズム隊もキーボードも貢献度が大きいです。

 たとえば二曲目のシングルとしてカットされた「キャント・レット・ユー・ゴー」ではデヴィッド・ローゼンサルのオルガンによるクラシカルなイントロが光っています。ハード・ロックらしい様式美を湛えていて、そこからハードに展開するところなど鳥肌ものです。

 もちろんターナーの貢献は極めて大きいです。前作から米国でヒットした「ストーン・コールド」の雰囲気を引き継い、本作品でのターナーのボーカルは若干ダークな色調を醸しており、そのボーカルがアルバムのトーンを決めています。腹の据わったボーカルです。

 狙い通り、最初のシングル「ストリート・オブ・ドリームス」は60位とはいえ全米シングル・チャートに顔を出しています。メインストリーム・ロック・チャートでは2位ですから、ラジオ局によっては頻繁にオンエアされたものと思われます。どすの効いたキャッチーな曲です。

 こうしてシングル・チャートまでにぎわす曲まで出てきたことから、またしても賛否両論うずまく作品になりました。最高傑作に推す人もいる一方で、もはやレインボーのアルバムではないと言い張る人まで。レインボーのアルバムあるある、風物詩ですね。

 私も安易にポップなる言葉を使ってきましたが、ポップの極みとされることもある本作品を聴いて反省しました。ポップって何なんでしょう。よく聴いてみると、ディープ・パープルからレインボーを通じてブラックモアがやってきたことはさほど変っていません。インスト曲に顕著です。

 結局はヘヴィ・メタルによく見られるはったりの成分が多いか少ないかの差ではないかと思うようになりました。はったりが強いと孤高のイメージとなり、弱いと親しみやすいポップ。本作品などはちょうど中間のバランスがとれた作品だと思います。傑作に一票!

Bent Out Of Shape / Rainbow (1983 Polydor)



Tracks:
01. Stranded
02. Can't Let You Go
03. Fool For The Night
04. Fire Dance
05. Anybody There
06. Desperate Heart
07. Street of Dreams
08. Drinking With The Devil
09. Snowman
10. Make Your Move

Personnel:
Ritchie Blackmore : guitar
Roger Glover : bass, percussion
Joe Lynn Turner : vocal
David Rosenthal : keyboards
Chuck Burgi : drums