レインボーのスタジオ・アルバムとしては4作目にあたる「ダウン・トゥ・アース」です。前作から1年とちょっとしか経過していませんが、作風が大きく変わったことが話題となりました。例えて言えばメタリカがボン・ジョビに変わったかのような変貌ぶりです。

 恒例のメンバー・チェックから参りましょう。まずはレインボー結成のきっかけともなったボーカリストのロニー・ジェイムス・ディオが脱退して、三頭政治の一角が崩れました。代わりに起用されたのはグラハム・ボネット、ビージーズのバリー・ギブの後押しでデビューした人です。

 ボネットはザ・マーブルスで全英ベスト5入りするヒットを放っていましたし、リンゴ・スターのレーベルからソロ・アルバムも発表していましたから、そこそこ名の知れたシンガーでした。ただし、ハード・ロックというよりも、よりポップな指向のボーカリストです。

 ついでにベースのボブ・デイズリーとキーボードのデヴィッド・ストーンも脱退、交代に入ってきたのは、何と元ディープ・パープルのロジャー・グローヴァーと、コロシアムのメンバーであり、ブラック・サバスとの共演もあるドン・エイリーでした。無名とはほど遠い人達です。

 結果的に前作から継続しているのはリッチー・ブラックモアとコージー・パウエルの二人だけになりました。パウエルはポップ指向が不満で脱退したディオよりも、さらにポップ指向に馴染まない。脱退の意思は早くから表明していましたが、だましだまし本作につき合いました。

 また、プロデューサーもディープ・パープル時代からの長い付き合いだったマーティン・バーチからグローヴァーに代わりました。あからさまなポップ指向はグローヴァーあってこその転換だったのかもしれません。恒例とはいえ、激しい交代劇ですね。

 シングル・カットされた「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」が本作品のポップ指向を象徴しています。オリジナル曲ではどうしてもポップさが足りないと判断したのか、元アージェントのラス・バラードの曲のカバーです。レインボー初の全英トップ10シングルとなりました。

 一方で、続くシングル曲「オール・ナイト・ロング」はアルバムのほとんどすべてを占めるブラックモアとグローヴァーの共作で、こちらも全英トップ10シングルになっています。確かに「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」には負けますが、パワー・ポップな色彩は強いです。

 ブラックモアはこの方向転換に対して、レインボーをアンダーグラウンドで終わらせたくなかったという趣旨の発言をしています。この発言には驚きました。私はレインボーのハード・ロックはロックの王道中の王道だと思ってたのに、まさかアングラとは。

 ただし、大転換とはいっても、ボネットは野太い声で力強くシャウトしていますし、ブラックモアもギターを弾きまくっています。曲がキャッチーになったからといって、レインボーのサウンドが180度変ったわけではありません。レインボーはレインボーなのでした。

 大作指向はすっかり影を潜めましたが、コンパクト、かつポップにまとめた楽曲群は大変聴きやすく、心躍ります。ボネットは本作限りなので、そのボーカル色が濃く出ている本作品は、レインボーの歴史の中でも特異な地位を占める佳作であろうと思います。

Down To Earth / Rainbow (1979 Polydor)



Tracks:
01. All Night Long
02. Eyes Of The World
03. No Time To Lose
04. Makin' Love
05. Since You Been Gone
06. Love's No Friend
07. Danger Zone
08. Lost In Hollywood

Personnel:
Ritchie Blackmore : guitar
Cozy Powell : drums
Roger Glover : bass, chorus
Don Airey : keyboards, chorus
Graham Bonnet : vocal