「メイド・イン・ヨーロッパ」のジャケットは英米盤「メイド・イン・ジャパン」とほぼ同じデザインになっています。ライブの名作として名高い同作にあやかった作品だということが一目瞭然です。あちらは金、こちらは銀。ただし、残念ながら売り上げは天と地ほども違いました。

 この作品は第三期ディープ・パープルの最後のツアーを収めたライブ盤です。1975年4月に行われたコンサートは、オーストリア、ドイツ、そして最後にフランスで行われました。最後のライヴと書かれていますが、収録された楽曲の大半はドイツ公演のもののようです。

 収録された楽曲は、すべて「紫の炎」と「嵐の使者」からのものです。潔いですね。オープニングは♪パナホーム♪で有名な「バーン」です。ソロの部分がスタジオ盤ほどかっちりしていないので、このバージョンはあまり人気がないようです。私もスタジオ盤の方が好きです。

 「紫の炎」からは、「ミストリーティッド」に「ユー・フール・ノー・ワン」、「嵐の使者」からは「レイ・ダブル・ディーラー」と「ストームブリンガー」。合わせて全部でわずか5曲です。しかも日本でのライブ同様に2枚組になるはずでしたが、結局1枚に収められてしまいました。

 このライブ盤は、リッチー・ブラックモアの最後のステージを収めたというところに大きな意義があります。さすがはブラックモアです。最後だからと言って決してだれているわけでもなく、いつもの通り全力でやっています、という風情がかっこいいです。

 そして、第三期ディープ・パープルの唯一のライブ盤だというところもポイントが高いです。デヴィッド・カヴァーディルのボーカルはソウルフルでライブに映えます。後にホワイトスネイクでメタル界に君臨するのも当然だと思わせるボーカルです。

 ディープ・パープルはやはりライブ・バンドなんですね。お家騒動で何やらかんやら話題に事欠かない人たちでしたし、スタジオ・アルバムはどれも一癖あって、メンバーの意見が一致した会心の出来というところになかなか到達しない人たちでした。

 しかし、このライブの手馴れた感じは凄くよいです。そもそも楽しそうです。イアン・ペイスのドラムもライブの方が走っていて私にはしっくりきます。ジョン・ロードのキーボードは、様式美だとスタジオ録音ですが、疾走感という点では断然ライブに軍配が上がります。

 4人も名前を出すと、残りのグレン・ヒューズに触れないわけにはいきません。彼のベースもいいんですよね。ファンキーなタッチで賑やかです。それに彼のボーカルもなかなか捨てがたい。もっともっとリード・ボーカルをとりたかったことでしょう。

 しかし、この作品はさほど売れませんでした。イギリスではチャート順位だけをとると「メイド・イン・ジャパン」よりも高いんですが、アメリカではけたが二つ違う惨敗ぶりです。日本でもブラックモアを追い出した第三期ということで大変分が悪いです。

 決してベストのライブではないのかもしれませんが、このアルバムは、ディープ・パープルのライブ・バンドとしての質の高さを証明していると思います。第四期がなかったことのようになっているジャケット裏の解説文はいかがなものかと思いますが。

Made In Europe / Deep Purple (1976 Purple)

*2014年6月21日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Burn
02. Mistreated
03. Lady Double Dealer
04. You Fool No One
05. Stormbringer

Personnel:
Ritchie Blackmore : guitar
David Coverdale : vocal
Glenn Hughes : bass, vocal
Jon Lord : organ, keyboards
Ian Paice : drums