ディープ・パープルの作品の中で、定番中の定番と言えば、まず名前があがるのがこのアルバム「マシン・ヘッド」です。前作に引き続いて、英国で1位となったほか、アメリカでも7位と大ヒット、ここ日本でも6位と洋楽としては異例の大ヒットを記録しています。

 前作の反省があったのでしょう、今回は全編これパープル節と言えるタイトでソリッドなハード・ロック・サウンドが展開します。ハード・ロックは様式美の世界と言われますが、それはこのアルバムの頃からではないでしょうか。様式の原点です。

 冒頭に置かれた「ハイウェイ・スター」、そして彼らの永遠の代表曲「スモーク・オン・ザ・ウォーター」を始め、全曲、捨て曲なしです。とにかく、ロック少年の憧れの的だったディープ・パープルはこのアルバムを発表した頃の彼らなのです。

 節税のためもあって、制作のためにスイスにわたった彼らでしたが、使うはずだったステージが炎上してしまい、計画は変更せざるをえませんでした。その時、ステージにいたのがフランク・ザッパ先生で、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」はその時のことを歌った曲です。

 この曲のイントロはロック史上最も有名なものです。ギターを手にしたことがあるロック好きの人ならば、必ず一度は弾いてみたことがあるはずです。意表をついたシンプルなリフですが、これは永遠にロック少年少女の脳裏に刻み付けられました。

 様式美とはよく言ったもので、ディープ・パープルの楽曲は構造がきっちりしていて、多くの人がコピーしてみようと思わせるサウンドになっています。ご本人たちには失礼な話ですが、様式がしっかりしているので、下手でも何となく様になるんですね。

 この当時、ツアー中にイアン・ギランとリッチー・ブラックモアという二大フロントマンがそれぞれ肝炎で休む事件が起こりました。普通はツアーを即キャンセルするところですが、ロジャー・グローヴァーがボーカルをとったり、ブラックモアの代わりにアル・クーパーを入れようとしたり。

 中心メンバーですら、入れ替え可能だと考えているとは凄いバンドです。それも様式が中心に居座っているバンドだということです。もちろん、ここでいう様式は、彼らが作り出したものですから、オリジナリティーそのものです。とやかく言われる筋合いはありません。

 この頃のパープルでは、ブラックモアとギランの関係が思わしくなく、ブラックモアは、シン・リジーのフィル・ライノットとセッションを行うなどしています。この組み合わせは意外な気がします。ブラックモアはもっとヘビメタ声が好きなのかと思っていましたので。

 実を申し上げますと、私にはこのアルバムはしっくりきません。これはライヴ盤を先に聴いたせいだと思います。楽曲はいい曲ばかりですし、演奏も素晴らしい。しかし、ライブの方がいいんです。スタジオ盤は録音場所に凝ってはいるものの、どうにも元気がなく聴こえます。

 演歌歌手にも似ているのですが、様式美というものは繰返し歌いこまれて磨かれていきます。ディープ・パープルも本来はライヴ・バンドです。「ハイウェイ・スター」も「スモーク・オン・ザ・ウォーター」もライヴでの演奏の方が私は数倍好きです。

Machine Head / Deep Purple (1972 Purple)

*2014年6月13日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Highway Star
02. Maybe I'm A Leo
03. Pictures Of Home
04. Never Before
05. Smoke On The Water
06. Lazy
07. Space Truckin'
08. When A Blind Man Cries

Personnel:
Ritchie Blackmore : guitar
Ian Gillan : vocal
Roger Glover : bass
Jon Lord : keyboards
Ian Paice : drums