クリフォード・ブラウンがライオネル・ハンプトン楽団の一員としてパリを訪れた際に現地のミュージシャンと制作したアルバム、第二弾です。ハンプトンの意向に反して行ったアルバイトですから、闇営業なのですが、翌年には堂々とブルーノートからも発売されています。

 参加ミュージシャンはピアノにアンリ・ルノー、ベースのピエール・ミシェロ、ドラムにベニー・ベネット、そしてトランペットのクリフォード・ブラウンの四人で、題して「クリフォード・ブラウン・カルテット」です。そのまんまのタイトルがついているところが闇営業っぽいです。

 このうち、ルノーとミシェロは「ジジ・グライス・クリフォード・ブラウン・セクステット」のセッションにも参加していた地元パリのミュージシャンです。絶好の機会を得て、貪欲にセッションに臨んでいた当時20代のミュージシャンですから、熱気がむんむんしています。

 一方、ベニー・ベネットはカリブ海出身で幼少期に米国に移住したドラマーですけれども、第二次世界大戦後はパリに移り住んで当地でジャズ・ミュージシャンとセッションをしたり、ミンストレル・ショーに参加したりしていました。パリでの現地調達といえます。

 そんなわけですから、ブラウンにとっては初めて楽器を交えるミュージシャンばかりです。ジャズはいいですね。初見のミュージシャンとスタンダード曲を中心にセッションを行い、それがそのまま作品になるわけですから。とれたてほやほやのサウンドです。

 演奏している楽曲は全6曲中5曲までがスタンダードです。ミュージカル「セント・ルイス・ウーマン」からの「降っても晴れても」に始まり、「アイ・キャン・ドリーム、キャント・アイ」、ロジャース&ハマーシュタインの「イット・マイト・アズ・ウェル・ビー・スプリング」。

 さらに「ユーアー・ア・ラッキー・ガイ」にミュージカル「ミュージック・イン・ジ・エア」の「歌こそは君」とミュージカルからの曲を中心とした当時のポピュラー・ソングばかりです。歌ものをブラウンのトランペットが吹きまくるという分かりやすい構成です。

 一曲だけブラウンのオリジナル「ブルー・アンド・ブラウン」が含まれています。典型的なフォー・ビートのジャズ曲で、ブラウンが気持ちよさげにトランペットを吹いています。この年代のジャズは本当にどれもこれもいいですね。やはりジャズの黄金期です。

 1953年10月15日に行われたセッションでは各楽曲が何回かテイクを重ねて録音されており、後に完全版が発表されています。さすがに同じ曲を続けて何度も聴くのはしんどい気がしますが、ここは作品の少ないブラウンですから、ありがたく思わないといけません。

 まだキャリアの短いブラウンによる旅先での現地のミュージシャンとのセッションですから、もちろん後の名盤の数々には及ばないでしょう。しかし、それを補って余りあるはつらつとした演奏です。ワン・ホーンですから、最初から最後までブラウン。そこが何よりもいいです。

 三人のリズム・セクションも余計なことは一切せずにブラウンとの会話を楽しんでいるようです。この頃のジャズはまだまだ若い音楽です。進取の精神といいますか、とにかくはつらつとしていて、サウンドが粒だっています。ほんと、この頃のジャズはいいですね。

Clifford Brown Quartet / Clifford Brown Quartet (1954 Blue Note)



Tracks:
01. Come Rain Or Come Shine 降っても晴れても
02. I Can Dream, Can't I
03. Blue And Brown
04. The Song Is You 歌こそは君
05. You're A Lucky Guy
06. It Might As Well Be Spring

Personnel:
Clifford Brown : trumpet
Henri Renaud : piano
Pierre Michelot : bass
Benny Bennet : drums