ローリング・ストーンズの「全公式録音を年代順に収録した大河アンソロジー」、「コンプリート・ストーンズ」もめでたく第四集を迎えました。ここまでは2集ずつ発売されており、順調な制作が続いています。宝の山を整理するのはさぞや楽しいことでしょう。

 さて、第四集は惨敗に終わった全米ツアー直後から、今度は成功する二度目の全米ツアーの直前までの録音が集められています。第三集まではデビュー前後、フィル・スペクターとの邂逅、チェス・スタジオとそれぞれに副題をつけられそうでしたが、今回は違います。

 第四集がカバーする1964年6月から9月の第四集を一言で言い表すとすると、いろいろやっている時期、とでもいうしかありません。何か目玉があるわけではなく、ツアーの合間に他者への曲提供や自身での録音を雑多にどんどんこなしていた時期です。

 まずは帰国直後に録音された「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」。オルガンによるイントロのバージョンで、ずいぶんとワイルドな演奏なのですが、これが9月に入って唐突に米国でシングル・カットされて、全米6位の大ヒットを記録するのでした。

 しばしばベスト盤に収録されているバージョンは後に米国で再録音されたもので、そちらは英国でのセカンド・アルバムにも収録されています。初期ストーンズを代表する名曲カバーです。後の定番もいいですが、オルガン・バージョンの荒削り感は捨てがたいです。

 続いてはアンドリュー・オールダム・オーケストラにメンバーが駆り出された録音です。さまざまな時期に録音されているために、本作の中に散りばめられていますが、全部で9曲も収録されています。ストーンズの演奏というわけではありませんが、当時の雰囲気が分かります。

 ここでの話題は参加ミュージシャンです。レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジとジョン・ポール・ジョーンズ、まさかのジョン・マクラフリンなどの後にビッグ・ネームとなる人々が参加しているんです。こうしたアンソロジーものには格好の話題を提供していますね。

 こうした演奏のうち何曲かはのちの編集盤「メタモーフォシス」にて発表済みです。なお、同作には同じ時期の録音による別曲も収録されており、完全をうたう本シリーズとの関係が謎です。まあストーンズ自身の演奏ではないので、よしとしましょう。

 当時のストーンズは自作曲をいろいろと試していた時期です。マネージャーのオールダムはストーンズ向きでなければ他人に提供する方針だったため、ここではそのためのデモ録音が何曲も収録されています。中では後に自身で再録する「ハート・オブ・ストーン」が光ります。

 シングル・ヒットはカバー曲で狙っています。ここでは前作収録の「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」に続く全英1位曲「リトル・レッド・ルースター」が何より輝きます。この他にもセカンド・アルバムに収録されるカバー曲4曲の録音が聴かれます。迫力ありますね。

 他にはマリアンヌ・フェイスフルのシングルへのキース・リチャーズの客演などが収録されています。総じて試行錯誤の時期といえるのでしょう。とにかく精力的に何でもやってみようという姿勢です。何から何まで雑食的に飲み込んでしまうストーンズの明るさがいいです。

The Complete Stones #4 / The Rolling Stones (2024 Eternal Groove)



Tracks:
01. Time Is On My Side (organ intro)
02. I Get Around
03. Heart Of Stone
04. Memphis Tennesee (inst Jam with Stones)
05. Surprise Surprise
06. Blue Turns To Grey (ver 1)
07. Blue Turns To Grey (ver 2)
08. Da Doo Ron Ron
09. Each And Every Day Of The Year (alt) 来る日も来る日も
10. (Walkin' Throu The) Sleepy City (alt) めざめぬ街
11. We're Wastin' Time (alt)
12. Little Red Rooster
13. Off The Hook
14. Under The Boardwalk
15. Susie Q
16. You Can't Catch Me
17. Grown Up Wrong
18. We Were Falling In Love (aka Waiving Hair)
19. Blowin' In The Wind 風に吹かれて
20. House Of The Rising Sun 朝日のあたる家
21. Needles And Pins
22. I Want To Hold Your Hand 抱きしめたい
23. I Wanna Be Your Man 彼氏になりたい

Personnel:
Mick Jaggar : vocal, tambourine
Keith Richards : guitar, chorus
Brian Jones : guitar
Bill Wyman : bass
Charlie Watts : drums
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Maianne Faithful : vocal
Andrew Ordham : vocal
Andrew Ordham Orchestra
Jimmy Page, John McLaughlin, Jim Sullivan, Joe Moretti : guitar
John Paul Jones : bass
Clem Cattini, Andy White : drums