「アンサー81」は1981年の年間を通して、大阪や京都など関西地区で何度も開催されたギグ・シリーズです。本作品はそのうち京都のライブハウス、磔磔で行われた1981年4月19日のライヴの模様を収録したものです。40年以上の時を経てCD化されました。快挙です。

 このシリーズを企画したのは、関西初のインディーズ・レーベルとされるアンバランス・レコードを運営していた林直人です。この頃、林は町田町蔵のINUを脱退したばかりで、本作品にも収録されているスリー・ピースのバンド、アウシュビッツを率いていました。

 このライヴに出演したバンドは5つで、本作品には非常階段、アウシュビッツ、ほぶらきんの3バンドが収録されています。同時発売のVol2にはスターリンが単独で収録されており、残るC.メミ+ネオ・マティスはこの日の音源が米国からリリースされ、これで網羅されました。

 本作品には出演順とは異なり、まず非常階段が収録されています。非常階段は1979年に結成され、その過激なパフォーマンスはすぐに世間の注目を浴びるようになりました。とりわけ舞台上で蝉丸嬢が放尿するに及んで一般メディアも取り上げらるようになっていました。

 1980年のアンバランスから発表されたオムニバス・アルバム「終末処理場」が音源デビューで、単独作は1982年の「蔵六の奇病」がデビュー作ですから、ちょうどその間、かなり初期のライブであるといえます。まだキング・オブ・ノイズとは言われていませんでした。

 ここでも「ステージ上にブルーシートを敷いて、用意した得体のしれない液体を頭からかぶり、ギターや一斗缶や壁掛け時計などを破壊するパフォーマンスを展開。爆音のノイズ演奏と相まってまさに阿鼻叫喚の地獄絵図だった」とリーダーのJOJO広重が回想しています。

 42分に及ぶノイズ演奏が収録されているのですが、その音の良さにまずは驚きます。スターリンの録音に比べると圧倒的にクリアです。ノイズは録音機材と相性が良いようです。圧倒的なウォール・オブ・ノイズが展開されていて、気分は爽快です。

 豊穣なサウンドの楽しみは奥が知れません。ここでの彼らのサウンドはノイズではありますが、とても音楽的で、メロディーを探すもよし、リズムを追うもよし、力を抜いてサウンドに浸るもよし、とさまざまに楽しめます。42分間もちっとも長くありません。さすがです。

 アウシュビッツは3曲、約20分の演奏です。ここではギターとボーカルの林、ベースの今西、ドラムの中島という初期メンバーでの音源であることが極めて珍しいとされています。リード楽器の様なベースの目立つ、ゆったりした重厚なリズムの重いサウンドがかっこいいです。

 最後は関西ニュー・ウェイブ・シーンにあほ花を咲かせたカルト・バンド、ほぶらきんです。ここでは6曲ですが全体で8分弱の演奏です。私の人生のアンセム「魚売り」が入っていて嬉しいこと限りありません。このライヴは既出ですが、別マスターなので音質が改善しています。

 分量からいっても非常階段が中心ではありますが、アウシュビッツもほぶらきんも負けてはいません。この頃の関西のパンク/ニュー・ウェイブ・シーンは本当に凄かった。その魅力をいかんなく伝えてくれる作品です。私が歳をとりすぎるまでにもっともっと発掘してほしい。

Answer 81 1981.4.19 Vol.1 / Hijokaidan + Auschwitz + Hovlakin (2023 Alchemy)

見当たらないので、近い時期の非常階段のライブをどうぞ。



Tracks:
非常階段
01. Live at Kyoto TakuTaku, 19th April 1981
アウシュビッツ
02. I'm Disease
03. High
04. Slow
ほぶらきん
05. 魚売り
06. アックンチャ
07. ゴースン
08. おんがりしとき
09. いけいけブッチャー
10. ペリカンガール

Personnel:
非常階段
アウシュビッツ
ほぶらきん