大変なことが始まってしまいました。ローリング・ストーンズの「全録音曲を年代順に収録するという画期的なシリーズ」である「コンプリート・ストーンズ」シリーズがついに始まったのです。私はとにかく全集ものに弱いので、将来負担を考えつつも第一集を買ってしまいました。

 企画したのは日本の会社です。内外のインディペンデント・レーベルのディストリビューションを手がけるアドニス・スクウェアのレーベル、エターナル・グルーヴスです。「ロックファンの願いを実現する希望のレーベル」で、「公式発売されていない音源のみを発掘」しています。

 と聞いていたので、このストーンズのシリーズも未発表音源のみで構成されるのではないかと一抹の危惧を抱いていたのですが、「コンプリート・ストーンズ」にはシングルやアルバムで発表された公式録音もすべて収録されています。これは凄いことです。

 どこまで行けるのか、さすがに「ハックニー・ダイアモンド」までは無理でしょうが、とにかく頑張ってほしいものです。ストーンズの1960年代はいろいろとややこしいので、このような整理は大歓迎です。欲をいえば、よりややこしいザ・フーもお願いしたいです。

 この記念すべき第一弾には、デビュー前から1963年11月14日の録音までが時系列で収録されています。当時、公式発表された、ファースト・シングル「カム・オン」、セカンド・シングル「彼氏になりたい」、そして初のEP「ザ・ローリング・ストーンズ」もここに含まれます。

 まずはストーンズ結成前にミック・ジャガーとキース・リチャーズが組んでいたバンド、リトル・ボーイ・ブルー・アンド・ザ・ブルー・ボーイズのリハーサル風景をホーム・レコーディングした音源で始まります。まだ10代の二人が頑張っている歴史的な録音です。貴重です。

 次いでストーンズ結成後の最古のデモ録音が1曲含まれます。これはスタジオで録音されてアセテート盤に記録されたもので、「近年、オークションに出現して明らかになった」というこれまた貴重な音源です。まあここまではノベルティ的な感覚ですかね。

 ここから本格的な録音が登場します。まずはイアン・スチュワートの友人だったという、後の名エンジニア、グリン・ジョンズの協力を得て録音したデモが5曲。レコード会社の反応は冷たかったのですが、アンドリュー・オールダムが登場してデッカとの契約を勝ち取ります。

 そしてデビュー・シングル、「カム・オン」、やがてEPに救われることになるセカンド・シングルに向けて試されたさまざまな楽曲、そしてビートルズがあっという間に書き上げてセカンド・シングルになった「彼氏になりたい」などなどが続いていきます。

 ここまでのところではまだオリジナル楽曲は出てきません。すべてブルースやロックンロールのカバーです。ストーンズはこうした楽曲を演奏することを目的としており、自作曲を書く発想がなかったようです。ビートルズに曲を提供されたことはいい刺激になったことでしょう。

 まるでデビュー当時のストーンズをリアルタイムで見ているような感覚になります。これは企画の大勝利です。さらにいえば、どれもこれも音質が素晴らしい。ジョンズによるデモ録音など鳥肌ものです。この頃のストーンズにはモノラルの尖った音が似合います。

The Complete Stones #1 / The Rolling Stones (2023 Eternal Grooves)



Tracks:
01. I Ain't Got You
02. Beautiful Delilah
03. Down The Road Apiece
04. Little Queenie
05. Medley: Little Queenie / Beautiful Delilah / La Bamba / Wee Baby Blues / Around And Around
06. You Can't Judge A Book By The Cover
07. Baby What's Wrong
08. Bright Lights, Big City
09. Diddley Daddy
10. I Want To Be Loved
11. Roadrunner
12. Come On
13. I Want To Be Loved
14. Fortune Teller 1
15. Fortune Teller 2 (no harp version)
16. Poison Ivy 1
17. Poison Ivy 2
18. Bye Bye Johnny
19. You Better Move On
20. Secret Love
21. I Wanna Be Your Man
22. Stoned
23. Go Home Girl
24. Money
25. Poison Ivy 3 (remake)

Personnel:
Mick Jaggar : vocal, harmonica, percussion
Keith Richards : guitar, chorus
Brian Jones : guitar, harmonica, chorus
Bill Wyman : bass, chorus
Charlie Watts : drums
***
Ian Stewart : piano
Dick Taylor : bass, guitar
Alan Etherington : maracas, drums
Bob Beckwith : guitar
Tony Chapman : drums