スーパートランプの大ブレイク作品、「クライム・オブ・センチュリー」です。それまでに発表した二枚のアルバムが泣かず飛ばずで、スポンサーにも見放され、崖っぷちに立たされたスーパートランプがついに大ヒットを飛ばしたのでした。拍手喝采です。

 前作「消えない封印」から2年が経過しています。この間にメンバーはまたまたリック・デイヴィスとロジャー・ホジソンの二人を除いて総入れ替えになりました。しかし、今回のメンバーはその後10年は続きます。ようやく安定したバンドになったのです。

 新しく加入したのはベースのダギー・トムソン、サックスとクラリネットのジョン・ヘリウェル、ドラムのボブ・シーベンバーグの三人です。いずれもそれまでに目立ったキャリアはなく、スーパートランプのメンバーとして知られるミュージシャンです。

 不動のメンバーを得たスーパートランプはプロデューサーにケン・スコットを迎えます。スコットはビートルズのエンジニアだった人で、プロデューサーとしてはデヴィッド・ボウイの「ジギー・スターダスト」などの名作を生んでいます。要するにプロフェッショナルですね。

 デイヴィスとホジソンの本作品にかける意気込みはとにかく盛んで、40曲を超えるデモ音源を制作したのだそうです。アルバムにはその中から8曲が選び抜かれましたが、残りの曲のうちのいくつかは後のアルバムで発表されたりしています。

 本作品は前作と大きく方向転換したわけではありません。プログレッシブ・ロック然としていたデビュー作とはテイストは異なりますけれども、前作のポップな路線はそのまま継続しています。しかし、格段にきらきらしたサウンドになっています。

 このあたりは二人がスタジオ制作に慣れてきたというのもあるでしょうが、何よりもスコットの力が大きいのではないでしょうか。サウンドの一つ一つが輝いているように聴こえます。サウンドのめりはりがきいており、格段にプロ仕様。プロデュースの力を感じます。

 全曲がデイヴィスとホジソンの共作名義になっていますけれども、最初の「スクール」と最後の表題曲を除けば、ほぼどちらかの単独作だそうです。これまでもそうでしたが、本作ではこれまで以上にお互いの個性がますます際立ってきたというところなのでしょう。

 CDのブックレットには歌詞が掲載されているのですが、デイヴィスがボーカルをとっている部分は黄色で、ホジソンが歌っている部分は白色で印刷されています。まるで日本のアイドル・グループのCDのようです。二人の個性を楽しむのもこのバンドの醍醐味です。

 お互いの曲が順番に並んでいます。デイヴィスはやや泥臭く力強い曲、ホジソンは甘めのメロディーが際立つ曲で、そのコントラストがいいです。大きく括ると、元プログレらしい構成の妙をみせるポップなロックという路線はここに確立したといえます。

 本作品は英国では4位、米国でも38位と見事なヒットとなりました。もともと人気のあったカナダやニュージーランドなどでは年間チャートでも上位に食い込む特大ヒットです。前作までの不振がうそのような快挙にバンドはどんどん勢いを増していくのでした。

Crime of the Century / Supertramp (1974 A&M)



Tracks:
01. School
02. Bloody Well Right
03. Hide In Your Shell
04. Asylum
05. Dreamer
06. Rudy
07. If Everyone Was Listening
08. Crime Of The Century

Personnel:
Bob C. Benberg : drums, percussion
Roger Hodgson : vocal, guitar, piano
John Anthony Helliwell : sax, clarinet, vocal
Dougie Thomson : bass
Richard Davies : vocal, keyboards, harmonica