今ではインディーズは珍しくもありませんが、この当時、業界人ではない素人が自主制作レーベルを作るという発想はありませんでした。ゴジラは道なき道に果敢に挑戦したのです。録音から何からすべて手探りで、販売も輸入盤店を回って頭を下げて置いてもらう形です。
私は当時ミスター・カイトの「共犯者」を行きつけの輸入盤店で見つけて手に入れました。モノクロのジャケットに包まれたシングル盤はまさに輝いて見えました。何かが始まる予感とでもいいましょうか。東京のアンダーグラウンド・シーンを掘り当てた気分でもありました。
一旦、出来ることが分かってしまえば、後は早い。この後、雨後の筍のようにインディーズ・レーベルが誕生することとなり、一大シーンが築かれていきます。忘れられがちですが、パイオニアとしてのゴジラの業績は高く評価されるべきです。インディーズ界の野茂英雄です。
ゴジラ・レコードは７９年までに６枚のシングルを発表しており、この作品はそのすべてを網羅したコンピレーションです。加えて、各バンドの未発表ライブ録音を収録しており、当時の東京アンダーグラウンド・シーンの記録として貴重な作品となっています。
収録バンドは５バンドです。まずはレーベル主宰者のミラーズです。ミラーズはシングルを２枚出しています。中心人物ヒゴはフリクションのレックと共に３分の３というバンドで活動していましたが、７７年秋にミラーズを結成します。東京ロッカーズの中心バンドの一つでした。
同じく東京ロッカーズのミスター・カイト。私は「共犯者」がもう大好きで大好きで。どうしてもこれもパンクであるというならば、ニューヨーク・パンクの系統です。ガレージ・ロック的な響きのギターを中心としたサウンドに、ジーンの切ないボーカルが歌う傑作です。
東京ロッカーズのフリクションに参加していたツネマツ・マサトシもここからシングル盤を出しています。ツネマツは後にＥＤＰｓなどでも活躍しますし、絵画の世界でもぶいぶい言わせます。一番安定した活動をその後も繰り広げた人でしょう。
そして当初予定されていたロック評論家鳥井賀句のバンド、ペインが解散したため、代わって同バンドのギタリストだったモジャが結成したフレッシュ。このバンドでは後にラップ・シーンで活躍する高木完がボーカルをとっています。東京ロッカーズのリザードっぽいパンクです。
最後はマリア０２３です。オートモッドでポジパンの星となるジュネのバンドですが、ていゆうとＯＴＯという後にじゃがたらとなる二人がいましたし、シングルには入っていませんが、ライブに入っているのはノン・バンドのノンです。まさにオールスター。たまりません。
ミスター・カイト以外は比較的ストレートにパンクなバンドばかりです。ライブは録音が悪いですけれども、そんなところも含めて、当時のアンダーグラウンド・シーンを懐古するにはもってこいのアルバムです。今から思えばとても純粋で素朴なシーンでした。
Crack! Gozira Records Complete Collection 1978-1979 / VA (1991 WAX)
*2014年12月17日の記事を書き直しました。
Tracks:
01. 衝撃X / Mirrors
02. ミラーズ / Mirrors
03. 共犯者 / Mr. Kite
04. EXIT B9 / Mr. Kite
05. いいかげん / Tsunematsu Masatoshi
06. き・を・つ・け・ろ / Tsunematsu Masatoshi
07. おきまりの午後 / Flesh
08. In The System / Flesh
09. Out Of Order / Mirros
10. Block Out / Mirrors
11. Theme / Human Being / Maria023
12. Machine Sex / Maria023
13. Face To Face / Maria023
14. Set Me Free (live) / Mr. Kite
15. S.O.B (live) / Tsunematsu Masatoshi
16. き・を・つ・け・ろ (live) / Tsunematsu Masatoshi
17. 仮面ライダーがやってくる (live) / Mirrors
18. デッサン (live) / Mirrors
19. Tokyo (studio live) / Maria023
Personnel:
Mirrors
肥後宏 : drums, vocal
松本裕明 : bass, vocal
安藤篤彦 : guitar, vocal
Mr. Kite
ジーン : vocal
アツシ : drums
タカシ : bass
ワク : guitar
ツネマツマサトシ
ツネマツマサトシ : guitar, bass, vocal
マキ : drums, chorus
Flesh
Kan : vocal
Moja : guitar
Hally : bass
Midori : keyboards
Hiro : drums
Maria023
Gnet : guitar, vocal
OTO : keyboards, guitar, vocal
Hioki : bass
Teiyu : drums
Non : bass, chorus (19 only)