イーホル・ブロヴスキーは建築家であり、画家であり、詩人であり、音楽家でもあるウクライナのアーティストです。生まれ育ちはリヴィウですから、ウクライナといってもロシアよりではなく、ポーランドにほど近い。それでも大きな町ですから戦火をまぬかれてはいません。
1962年生まれのブロヴスキーは音楽学校でピアノを学び、さらにリヴィウの大学で建築を学びます。絵画にも才能を発揮しており、建築の分野ばかりではなく絵画でもさまざまな展覧会に参加して頭角を現わしていき、現在に至るも活躍している人です。
「カム・エンジェル」と題された本作品は1980年代からブロヴスキーが追求してきた音楽の形を結晶化させたともいえる作品で、もともとはベルリンで行われたプロモーション・ツアーのために録音されたものです。オリジナルはごく少数だけカセットテープでリリースされました。
リヴィウで1995年に録音され、翌年、KOKAレコードというワルシャワのレーベルから発売されました。ブロヴスキーはポーランドやウクライナでコンサートを開催しながら作品をプロモートしていたとのことですが、いかんせんローカルな話でしかありませんでした。
しかし、これが少しずつ少しずつ聴きつがれていき、やがて伝説の作品として注目を集めていきます。そうして2016年に設立されたばかりのドイツのレーベル、オフェン・ミュージックから本作品の一部を抜粋した12インチがリリースされてさらに注目されていきます。
手元にある作品は、2022年になってようやく実現したフル・アルバムでの再発盤です。発売は今度はオーストリアのレーベル、インフィニット・フォグからです。いい音楽はいつか陽の目をみるチャンスがあることの実例がここにあります。
再発のアートワークが揮っています。ジャケットを開き、盤を取り出すと、その下から現れるのはブロヴスキーの絵画の代表作「天使の反乱」の一部です。描かれたのは1994年のことですから、本作品の録音時期とかなり近い時期ですし、タイトルも関連があります。
また、再発盤には2000年に発表された「世界が見ない音楽」というそのものずばりの名前のもとにポーランドで開催されたライヴ・コンピレーションからボーナス・トラックが追加されました。限定200枚のCD-Rですから、これまた貴重です。
長々と本作品の数奇な運命を紹介してきました。肝心の中身はというと、タイトル曲のみ他の楽器も使われていますが、ほとんどがブロヴスキーの弾き語りです。ネオクラシカルなピアノの演奏とともに、女性の声かと思うほど高くて美しい声による歌唱が収録されています。
ピアノの音はけっして綺麗な録音ではないのですが、それがかえって戦間期のヨーロッパのような雰囲気をもたらしていてしびれます。その旋律はロックやジャズなどの影響を受けていないアートでエスニックなヨーロッパそのものです。不思議なサウンドです。
ビョークやマーク・アーモンドを始め、さまざまなアーティストと比較されますけれども、この独特の世界を表現しようとすると当然のことながらそれでは足りません。ディープなヨーロッパ、聴いたことがないヨーロッパがここにあります。恐るべき音楽でした。
Come, Angel / Ihor Tsymbrovsky (1996 KOKA)
Tracks:
01. Roses To A Poet
02. To Be
03. With A Genuine Heart
04. Wandering Heart
05. Beatrice
06. I've Dreamt Of You Today
07. By The Sea
08. Come Angel
09. Brilliant Small Poetry
Personnel:
Ihor Tsymbrovsky
1962年生まれのブロヴスキーは音楽学校でピアノを学び、さらにリヴィウの大学で建築を学びます。絵画にも才能を発揮しており、建築の分野ばかりではなく絵画でもさまざまな展覧会に参加して頭角を現わしていき、現在に至るも活躍している人です。
「カム・エンジェル」と題された本作品は1980年代からブロヴスキーが追求してきた音楽の形を結晶化させたともいえる作品で、もともとはベルリンで行われたプロモーション・ツアーのために録音されたものです。オリジナルはごく少数だけカセットテープでリリースされました。
リヴィウで1995年に録音され、翌年、KOKAレコードというワルシャワのレーベルから発売されました。ブロヴスキーはポーランドやウクライナでコンサートを開催しながら作品をプロモートしていたとのことですが、いかんせんローカルな話でしかありませんでした。
しかし、これが少しずつ少しずつ聴きつがれていき、やがて伝説の作品として注目を集めていきます。そうして2016年に設立されたばかりのドイツのレーベル、オフェン・ミュージックから本作品の一部を抜粋した12インチがリリースされてさらに注目されていきます。
手元にある作品は、2022年になってようやく実現したフル・アルバムでの再発盤です。発売は今度はオーストリアのレーベル、インフィニット・フォグからです。いい音楽はいつか陽の目をみるチャンスがあることの実例がここにあります。
再発のアートワークが揮っています。ジャケットを開き、盤を取り出すと、その下から現れるのはブロヴスキーの絵画の代表作「天使の反乱」の一部です。描かれたのは1994年のことですから、本作品の録音時期とかなり近い時期ですし、タイトルも関連があります。
また、再発盤には2000年に発表された「世界が見ない音楽」というそのものずばりの名前のもとにポーランドで開催されたライヴ・コンピレーションからボーナス・トラックが追加されました。限定200枚のCD-Rですから、これまた貴重です。
長々と本作品の数奇な運命を紹介してきました。肝心の中身はというと、タイトル曲のみ他の楽器も使われていますが、ほとんどがブロヴスキーの弾き語りです。ネオクラシカルなピアノの演奏とともに、女性の声かと思うほど高くて美しい声による歌唱が収録されています。
ピアノの音はけっして綺麗な録音ではないのですが、それがかえって戦間期のヨーロッパのような雰囲気をもたらしていてしびれます。その旋律はロックやジャズなどの影響を受けていないアートでエスニックなヨーロッパそのものです。不思議なサウンドです。
ビョークやマーク・アーモンドを始め、さまざまなアーティストと比較されますけれども、この独特の世界を表現しようとすると当然のことながらそれでは足りません。ディープなヨーロッパ、聴いたことがないヨーロッパがここにあります。恐るべき音楽でした。
Come, Angel / Ihor Tsymbrovsky (1996 KOKA)
Tracks:
01. Roses To A Poet
02. To Be
03. With A Genuine Heart
04. Wandering Heart
05. Beatrice
06. I've Dreamt Of You Today
07. By The Sea
08. Come Angel
09. Brilliant Small Poetry
Personnel:
Ihor Tsymbrovsky