ロンとラッセルのメイル兄弟は自分たちが狙っていないところで人気が出ることに気づき、それではということで、バンドを再編成することを選択しました。時はニュー・ウェイヴ時代ですから、バンド形態には逆風が吹いており、逆張りといえそうです。
そこで、兄弟はロサンゼルスのコーヒー・ショップで知り合ったベイツ・モーテルなるバンドを雇いあげます。ギター、ベース、ドラムの典型的なロック・トリオです。ロスで6週間のリハーサルを行って手ごたえを感じた彼らはミュンヘンに飛んでレコードを制作します。
それが本作品「弱い者いじめ」です。なんという邦題でしょう。原題は「ウォンプ・ザット・サッカー」、あほをやっつけろですからかけ離れているわけではありませんけれども、もう少し他に邦題のつけようがあったでしょうに。陰湿な感覚はスパークスには似合いません。
なぜにミュンヘンかといえば、ジョルジョ・モロダーとの関係です。モロダー自身は本作品にかかわっていませんけれども、スパークスは彼の会社との関係を継続しており、本作品はミュンヘンにあるモロダーのスタジオで制作されたのでした。
プロデューサーに迎えられたのは、ELOやクイーンのアルバムを手掛けたことで有名なマックです。マックもドイツ人ですから、ミュンヘンでのレコーディングにはもってこいです。かたくなにセルフ・プロデュースをしないスパークスですね。
ベイツ・モーテルとのケミストリーは良好でした。この時点ではまだ兄弟とバックバンドの域を出ていないとしていますけれども、ロック・バンドに戻ったスパークスはこれはこれで生き生きとしています。意識的に選択したバンド形態はベイツ・モーテルの三人あってこそです。
ディスコ・サウンドは影を潜めており、ロンドン時代のロック・サウンドに近くなっています。スパークスのもともといらちなビートはニュー・ウェイヴ時代にあってまるで違和感がありません。シンセサイザーの使い方もパワーアップしており同時代的です。
スパークスの曲作りは驚くべきことに歌詞が最後なのだそうです。それまではラッセルが無味な言葉をあてて歌っており、完成したところで歌詞が入る。なるほど歌詞のイメージが先にあるとこういうサウンドにはならないでしょうし、そもそもこんな歌詞にはならないでしょう。
たとえば本作品からシングル・カットされた2曲。「ティップス・フォー・ティーンズ」では90歳のおばあさんが10代の子どもに10代の過ごし方を指南しますし、「ファニー・フェイス」ではイケメン過ぎて人間扱いされないと悩む男が事故で面白い顔になって喜びます。
「私は火星人と結婚した」という歌もありますし、「私を撃たないで」では、サイとカバの撃たれる側の視点に続いてハンターも撃たれるというひねりが入ります。普段あまり歌詞を気にしない私でもスパークスのウィットにとんだ歌詞は気になって仕方ありません。
スパークスらしい極上のポップは、マックの影響かELOないしはクイーンっぽいサウンドを得てますます輝いています。しかし、本作品はアメリカでも発売されましたが、欧州ほどには成功していません。スパークスの次なる目標はアメリカ攻略となったのでした。
Whomp That Sucker / Sparks (1981 RCA)
Tracks:
01. Tips For Teens
02. Funny Face
03. Where's My Girl
04. Upstairs
05. I Married A Martian
06. The Willys
07. Don't Shoot Me
08. Suzie Safety
09. That's Not Nastassia
10. Wacky Women
Personnel:
Ron Mael : keyboards, synthesizer
Russell Mael : vocal
Leslie Bohem : bass, chorus
Bob Haag : guitar, chorus
David Kendrick : drums
***
Mack : synthesizer programming, glass shattering
そこで、兄弟はロサンゼルスのコーヒー・ショップで知り合ったベイツ・モーテルなるバンドを雇いあげます。ギター、ベース、ドラムの典型的なロック・トリオです。ロスで6週間のリハーサルを行って手ごたえを感じた彼らはミュンヘンに飛んでレコードを制作します。
それが本作品「弱い者いじめ」です。なんという邦題でしょう。原題は「ウォンプ・ザット・サッカー」、あほをやっつけろですからかけ離れているわけではありませんけれども、もう少し他に邦題のつけようがあったでしょうに。陰湿な感覚はスパークスには似合いません。
なぜにミュンヘンかといえば、ジョルジョ・モロダーとの関係です。モロダー自身は本作品にかかわっていませんけれども、スパークスは彼の会社との関係を継続しており、本作品はミュンヘンにあるモロダーのスタジオで制作されたのでした。
プロデューサーに迎えられたのは、ELOやクイーンのアルバムを手掛けたことで有名なマックです。マックもドイツ人ですから、ミュンヘンでのレコーディングにはもってこいです。かたくなにセルフ・プロデュースをしないスパークスですね。
ベイツ・モーテルとのケミストリーは良好でした。この時点ではまだ兄弟とバックバンドの域を出ていないとしていますけれども、ロック・バンドに戻ったスパークスはこれはこれで生き生きとしています。意識的に選択したバンド形態はベイツ・モーテルの三人あってこそです。
ディスコ・サウンドは影を潜めており、ロンドン時代のロック・サウンドに近くなっています。スパークスのもともといらちなビートはニュー・ウェイヴ時代にあってまるで違和感がありません。シンセサイザーの使い方もパワーアップしており同時代的です。
スパークスの曲作りは驚くべきことに歌詞が最後なのだそうです。それまではラッセルが無味な言葉をあてて歌っており、完成したところで歌詞が入る。なるほど歌詞のイメージが先にあるとこういうサウンドにはならないでしょうし、そもそもこんな歌詞にはならないでしょう。
たとえば本作品からシングル・カットされた2曲。「ティップス・フォー・ティーンズ」では90歳のおばあさんが10代の子どもに10代の過ごし方を指南しますし、「ファニー・フェイス」ではイケメン過ぎて人間扱いされないと悩む男が事故で面白い顔になって喜びます。
「私は火星人と結婚した」という歌もありますし、「私を撃たないで」では、サイとカバの撃たれる側の視点に続いてハンターも撃たれるというひねりが入ります。普段あまり歌詞を気にしない私でもスパークスのウィットにとんだ歌詞は気になって仕方ありません。
スパークスらしい極上のポップは、マックの影響かELOないしはクイーンっぽいサウンドを得てますます輝いています。しかし、本作品はアメリカでも発売されましたが、欧州ほどには成功していません。スパークスの次なる目標はアメリカ攻略となったのでした。
Whomp That Sucker / Sparks (1981 RCA)
Tracks:
01. Tips For Teens
02. Funny Face
03. Where's My Girl
04. Upstairs
05. I Married A Martian
06. The Willys
07. Don't Shoot Me
08. Suzie Safety
09. That's Not Nastassia
10. Wacky Women
Personnel:
Ron Mael : keyboards, synthesizer
Russell Mael : vocal
Leslie Bohem : bass, chorus
Bob Haag : guitar, chorus
David Kendrick : drums
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Mack : synthesizer programming, glass shattering