BiSHは宣言通り2023年6月に解散しましたが、解散までの助走期間が長かったことから、解散から間を置かずに各メンバーのソロ活動が活発に展開していきました。バンドないしグループの解散としては理想的な形態だったと思います。さすがBiSHです。

 セントチヒロ・チッチは、同じ名前を引き続き使って音楽活動を続けることが決まっており、本作品が解散後初の成果となります。さらに、チッチは加藤千尋の名で俳優としても活動することを宣言し、さっそく「雷に7回撃たれても」の舞台への出演が決まっています。

 メンバーそれぞれが活発に活動する中でも、バラエティ番組への露出が何かと多いハシヤスメ・アツコとともに、とりわけ順調な滑り出しであると思います。「パーセンテージ」と名付けられた本作品は、解散後に発表された元メンバーの音楽アルバムとしては第一号です。

 BiSH時代のチッチはアイナ・ジ・エンドやアユニDに比べるとソロ活動が控えめだっただけに、満を持して本作品が発表されたことには感慨深いものがあります。ソロとしては本作に向けた2曲を別にすれば「夜王子と月の姫」だけでしたから、物足りない思いをしておりました。

 本作品はWACKの渡辺淳之介がプロデューサーとして記載されていますが、各楽曲はもちろんのこと参加ミュージシャンの選び方にもチッチの好みが色濃く反映されており、チッチのセルフ・プロデュース作品と考えてもよさそうです。さすがですね。

 全11曲中、チッチが単独で作詞作曲を手がけた曲が半分を超える6曲、共作が4曲とほとんどすべての曲の曲作りに関わっています。さらにアレンジにクレジットされている曲も1曲あって、アイドルの初ソロ・アルバムとしては規格外の作品ではないでしょうか。

 参加しているミュージシャンは、元ブルーハーツの真島昌利、銀杏BOYZの峯田和伸の他に、富澤タク、おかもとえみ、杉森ジャック、koyabin、Fumi、yucco、馬場庫太郎、カワノアキ、Ryosuke Take、J.Og、てらだ、などが名前を連ねています。

 真島と峯田以外は実はよく知らないのですが、いずれも名のある豪華アーティストだということです。演奏にはほとんどの曲でギター、ベース、ドラムが中心となっており、ロック魂を感じますから、おそらくはそうした系統のアーティストたちなのでしょう。

 全体の感触はインディーズっぽいです。昔のインディーズとは異なり、録音などももちろんしっかりしているのですが、ロックの生感覚が何ともいえず香ばしく、そんなところにインディーズっぽさを感じるわけです。BiSHも初期の頃はこんな感じだったように思います。

 「紙ヒコーキと晴れのちコーヒー」のみ全編コンピューターによる楽曲なのですが、これがチッチのアレンジだと知って意外に思いました。ロック少女であったチッチがこういうアレンジを指向しているとすれば、また次の作品が楽しみになってきます。

 チッチの歌はさすがはBiSHの中心だっただけのことはあります。アイナやアユニのような独特のボーカルではなく、綺麗な声で王道をいく歌なのですが、存在感は抜群です。気持ちよさそうにさまざまな表情で歌う姿はかっこいいです。飽きの来ない作品です。

Per→Cent→Tage / Cent (2023 Wack)



Tracks:
01. すてきな予感
02. ナポレオーネ通りにて
03. 決心
04. おとぎばなし
05. 君へ
06. インマイルームフェス
07. 紙ヒコーキと晴れのちコーヒー
08. あそぼーよ
09. 向日葵
10. 夕焼けBabyblue
11. .Q

Personnel:
Centchihiro Chittii : vocal
***
J.og、koyabin : guitar, programming
馬場庫太郎 : guitar
杉森ジャック : guitar, synthesizer
Fumi、カワノアキ : bass
Yucco、 Ryosuke Take、てらだ : drums
高根晋作 : programming
西村奈央 : keyboard harmonica