レッド・ツェッペリンのファースト・アルバムは必ずしも評論家受けはよくありませんでしたが、ファンの人気はすこぶる高く、この機を逃してはならじと、アトランティック・レコードに急かされるようにして制作されたのがこのセカンド・アルバムです。

 忙しいツアーの合間を縫ってロンドン、ロスアンジェルス、ニューヨークのさまざまなスタジオで録音されており、ジミー・ペイジ・リーダーは強行日程でミックスダウンに臨んでいます。だからといって作品の出来が悪いわけではありません。むしろ神がかった作品となりました。

 余談ですが、彼らのツアーでの羽目の外しっぷりはかなりのもので、数々のやんちゃ伝説が残されています。ただし、彼らはあまりそういうキャラではないように思われており、そんな逸話をきくとなんだか変な感じがします。人徳というか何と言うか。

 アルバムは大ヒット曲「胸いっぱいの愛を」で始まります。ロック界有数のリフで始まるこの曲はアメリカではシングル・カットされてミリオン・セラーになっています。あまりシングル向きでないブレーク部分がカットされた短縮版もあり、コレクター魂に火をつけています。

 いかにも急造らしく、歌詞はかなりウィリー・ディクソンの曲からパクっています。問題になるとしても売れた時のことだと、あっけらかんとしたもんです。ペイジ・リーダーの何でも来いのアレンジで、とにかく印象的な曲に仕上がっています。名曲です。

 もう一曲代表曲は「ハートブレイカー」です。B面冒頭におかれていて、これもまた古典的な名曲になっています。揺れるようなギターがカッコいい曲です。ライブでもオープニングやアンコールで演奏されていますから、自信作なんでしょうね。本当に素敵な曲です。

 注目は「ハートブレイカー」から間髪を入れずに始まる次の曲「リヴィング・ラヴィング・メイド」です。「胸いっぱいの愛を」のシングルB面になった曲ですが、日本人がロックをやるとこうなるぞという感じの曲です。グループサウンズのようなんですね。一際異彩を放っています。

 異彩と言えばさらに「モビー・ディック」です。ボンゾのドラム・ソロを中心に据えた曲で、そもそも当時も今もロックではドラム・ソロ自体が異色ですからね。さらに、前作に続いてブルース臭が漂う曲もあれば、トラッドっぽい曲もありと懐の深さを見せつけます。

 一か所に腰を落ち着ける間もない慌ただしい制作であったにも関わらず、アルバムには見事な統一感があります。ペイジ・リーダーのプロデュース・ワークの力も大きかったんでしょう。それにバンド全体がエネルギーに満ち溢れています。無敵の快進撃状態です。

 本作は、ビートルズの「アビー・ロード」を抜いて全米一位となると7週間連続で首位をキープする大ヒットになりました。セールス的にはすでに絶頂を迎えたわけです。若さと奔放さに満ち溢れたハード・ロックの教科書です。さすがは元祖ハード・ロックのバンドです。

 息苦しいほどのエネルギーを感じます。楽しそうなマックス・ハイ・テンションで、ロックの楽しさ、奔放さというのはこういうものであるというショーケースになっています。プロデュース過多とも言われますが、やはりこれは奇跡の名盤と言ってよいのではないでしょうか。

Led Zeppelin II / Led Zeppelin (1969 Atlantic)

*2014年4月9日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Whole Lotta Love 胸いっぱいの愛を
02. What Is And What Should Never Be 強き二人の愛
03. The Lemon Song
04. Thank You
05. Heartbreaker
06. Living Loving Maid (She's Just A Woman)
07. Ramble On
08. Moby Dick
09. Bring It On Home

Personnel:
John Bonham : drums, chorus
Robert Plant : vocal, harmonica
Jimmy Page : guitar, theremin, chorus
John Paul Jones : bass, organ, chorus