デビュー・アルバムを発表した後、ジャーニーはリズム・ギターを担当していたジョージ・ティックナーが脱退して四人組となりました。本作品は四人組となったジャーニーの初アルバム「未来への招待状」です。恒例の邦題がしっかりとつけられました。

 本作品も米国でのチャート順位よりも日本での順位が上回っています。しかも前作よりもさらに上昇してオリコン58位を記録しました。米国では100位にすぎません。総じて洋楽の順位が低いオリコン・チャートでこれは立派な成績です。

 前作はロイ・ハリーがプロデュースを担当していましたが、今回はジャーニー自身がエンジニアのグレン・コロトキンの助力を得てプロデュースに挑んでいます。ちなみにコロトキンはサンタナとの仕事が有名で、かの「スーパーナチュラル」でグラミー賞も獲得しています。

 ハリーにコロトキンですから、コロンビア・レコードもジャーニーに期待していたことが分かります。元サンタナの実力者にエインズレー・ダンバーですから当然の期待でしょう。残念ながらまだヒットしたわけではありませんが、臥薪嘗胆の時期でしょう。

 本作品ではインストゥルメンタル曲がなくなり、全曲にグレッグ・ローリーのボーカルが入るようになりました。しかし、後のヒットメーカー時代とは異なり、ここではボーカルよりも演奏が中心となったプログレッシブ・ロック路線が継続しています。

 そして何といっても目立っているのはニール・ショーンのギターです。当時のジャーニーの日本での人気はショーンのギターに対するものだったといってもおかしくありません。それほど縦横無尽に弾きまくるショーンです。タイトル曲など本当にすごい。

 ジャーニーの曲作りはローリーとショーンが担っており、双頭バンドであるはずなのですが、ファースト以来、ローリーのキーボードはどちらかというとリズム隊の中に埋め込まれています。そこも前作のプロデューサー、ハリーの功績に帰す意見もあります。

 エインズレー・ダンバーの重厚なドラムとロス・ヴァロリィのしっかりしたベースにローリーのキーボード、そしてショーンのリズム・ギターが演奏の骨格を作り、ローリーのボーカルがメロディーを示す。そこをショーンのリード・ギターが駆け巡る、そんなサウンドです。

 曲はポップに流れることなく、プログレッシブ・ロック仕様の複雑な構成になっています。即興演奏も取り入れていると思われ、1970年代半ばのアメリカン・ロックの底力を感じます。2曲がシングル・カットされましたがヒットはしていません。アルバム勝負のサウンドですから。

 本作品で話題となったのはカバー曲です。それもビートルの「イッツ・オール・トゥー・マッチ」です。「イエロー・サブマリン」に収録されたジョージ・ハリソン作曲のアシッド・ソングです。これを選んだところがこの時期のジャーニーの心意気を示しています。

 ファーストに負けず劣らず真っ向勝負のいいアルバムだと思いますが、ジャケットは頂けません。プログレッシブ・ロックと言われるのですから、ジャケットにももう少し工夫があっても良かった。サウンドの見せ方の問題です。ここが良ければもうちょっとは売れたでしょうに。

Look Into The Future / Journey (1976 Columbia)



Tracks:
01. On A Saturday Nite
02. It's All Too Much
03. Anyway
04. She Makes Me (Feel Alright)
05. You're On Your Own
06. Look Into The Future 未来への招待状
07. Midnight Dreamer
08. I'm Gonna Leave You

Personnel:
Gregg Rolie : keyboards, vocal
Neal Schon : guitar
Ross Valory : bass
Aynsley Dunbar : drums