2023年のワールド・ベースボール・クラシックスは大いに盛り上がりました。その盛り上がりに一役かったのがテーマソングのように流れていたジャーニーの楽曲でした。ロック史では無視されることが多いバンドですけれども、その人気は絶大です。

 本作品は1975年4月に発表されたジャーニーのデビュー・アルバムです。後のジャーニーしか知らない人には驚きでしょうが、ジャーニーはこの頃プログレッシブ・ロック・バンドと呼ばれていました。大ヒットをとばして産業ロックなどといわれるのはしばらく後のことです。

 ジャーニーの母体となったのはサンタナです。わずか17歳の時にサンタナでデビューした天才ギター少年ニール・ショーンがサンタナを脱退して結成したバンドに、これまた元サンタナのグレッグ・ローリーが合流して生まれたバンドがジャーニーです。

 当初のラインナップはここにギターのジョージ・ティックナー、ベースのロス・ヴァロリィ、ドラムにチューブスのプレイリー・プリンスを加えた5人組でした。ヴァロリィによればこのバンドはフュージョンとプログレ的なアプローチのジャム・バンドということでした。

 やがてバンドからプリンスが脱退すると、フランク・ザッパ組にいたエインズレー・ダンバーが後任に迎えられます。新たなラインナップとなったジャーニーは1974年2月にステージ・デビューするとまもなく大手コロンビア・レコードと契約を交わすことに成功します。

 そうして発表されたデビュー・アルバムが本作品です。プロデューサーにはサイモンとガーファンクルでお馴染みのロイ・ハリーが起用されています。いかにもミスマッチなプロデューサーですけれども、ショーンのギターを重ねるなどハリーはしっかり仕事をしています。

 サンタナから飛び出したバンドには他にアステカやマロがいますが、ジャーニーはラテン風味を残すこうしたバンドとは一線を画しています。ここで展開されるサウンドは、当初目論見どおり、ジャズ・フュージョンおよびプログレッシブ・ロック系統に属します。

 各メンバーの演奏力が高かった一方で、ローリーのボーカルは控え目な位置づけにあったこともあり、ジャーニーはステージ上でメンバーが火花を散らすジャム・バンドであったことがよく分かるサウンドです。それぞれのインタープレイは素晴らしいです。

 もともと定評のあったショーンのギターは縦横無尽に駆け巡り続けていますし、ダンバーの重厚感あふれるドラムさばきはサウンドに一本筋を通しています。各楽曲の構成力も素晴らしく、改めてきちんと向き合ってみて、胸が熱くなりました。

 一方で、アルバムは全米100位にも入らない結果になりました。ローリーは、元サンタナということで観客はコンガを期待していましたが、コンガなど見るのも嫌だったんだと語っています。そのあたりもセールスが不調だったことと関係がありそうです。

 しかし、この作品は日本では評価されました。オリコン・チャートでも72位ではありますけれども、米国よりは高い。ニール・ショーンの人気もあったでしょうが、本作品のサウンドを正しく評価した結果だと胸を張ってよいと思います。私は当時あまり知りませんでしたが...。

Journey / Journey (1975 Columbia)



Tracks:
01. Of A Lifetime 時の彼方へ
02. In The Morning Day 朝はブルーさ
03. Kohoutek
04. To Play Some Music 君にイカした音楽を!
05. Topaz
06. In My Lonely Feeling / Conversations 悲しい気分で/会話
07. Mystery Mountain 神秘の山

Personnel:
Neal Schon : guitar, chorus
George Tickner : guitar
Gregg Rolie : vocal, keyboards
Ross Valory : bass, piano, chorus
Aynsley Dunbar : drums