カルヴィン・ハリスの5年ぶり6作目となる「「ファンク・ウェイヴ・バウンスVol.2」です。何といっても5年ぶりなので、Vol.1を思い出すのにずいぶん時間がかかりました。そもそも持っていたのかどうか忘れて、あやうくまた買ってしまうところでした。

 前作Vol.1は日本を含め、なんと世界47カ国のiTunesチャートで1位を獲得するヒットを記録しています。本作品はその続編ですから当然にヒットが期待されるところでしたが、かなりヒットしているとはいえ、今のところは前作には及びません。Vol.2の宿命です。

 前作の最大の特色は豪華ゲスト陣の参加でした。今回もまったく負けていません。ジャスティン・ティンバーレイク、ファレル・ウィリアムス、ジョルジャ・スミス、デュア・リパ、スヌープ・ドッグ、バスタ・ライムスなど豪華ゲスト23組が参加しています。

 ヒットチャートに疎い私でもよく知っている名前が並んでいるところが凄いです。ダンス・ミュージックの世界はこうしてフィーチャリング・アーティストにビッグ・ネームが並ぶことが本当に普通のことになりました。軽やかな動きは昔のロックでは考えられないことです。

 そんな時代遅れの感想は横においておきましょう。ハリスは相変わらず世界一稼ぐDJと言われており、その出演料は一晩で40万ドルだと言われています。ラスベガスでは長期契約を結んでいますし、イビザ島に農場を買ったにしても本業は忘れることはありません。

 ハリスの語るところによると、菜食主義者をやめてレバーや骨髄を食べるようになり、元気を取り戻した結果がこの作品だということです。しゅっとしているというよりもギトギトしたファンクな感じがこの逸話からも伝わってきます。さすがはスーパースターです。

 本作品ではほとんどの楽器や機材をハリスが演奏しており、そこに豪華ゲストによるボーカルが乗っていくというパターンを前作から踏襲しています。とにかく多彩なゲストが参加していますから、各楽曲が独立した作品になっており、あっという間の45分です。

 アルバムは、エレピによるメロウな「イントロ」に導かれ、例外的に新世代のファンク・ベーシスト、アリシア・バンヴェニストをベースに迎えたねっとり系ファンク色の濃い「ニュー・マネー」で幕を開けます。ここでのラッパーはアトランタのサヴェージ21です。

 こうした聴き方をしていくと本作品はとても忙しいです。超豪華ゲスト陣が入れ替わり立ち代わり現れてきますし、それぞれにラテン風味の泣きのギターが入ってみたり、かつてのディスコ・サウンドやファンク・サウンドへのオマージュが現れたりします。

 ガーディアン紙はこれをディスコ・ポップと呼び、ローリング・ストーン誌はポップEDMと表現しています。ポップという言葉が使用されるには歴史を踏まえていなければなりません。本作品で聴かれるサウンドは前作同様にちょっとレトロ風味があります。

 そのあたりの塩梅が絶妙です。ポピュラー音楽の最前線を突っ走りながらも、けして聴くものを置いていかない。昔のディスコしか聴いたことがない人々であっても無理なく新しい風を浴びることができます。世界一稼ぐDJの称号はだてではありません。楽しい作品です。

Funk Wav Bounces Vol.2 / Calvin Harris (2022 Columbia)



Tracks:
01. Intro
02. New Money
03. Potion
04. Woman Of The Year
05. Obsessed
06. New To You
07. Ready Or Not
08. Stay With Me
09. Stay With Me (Part 2)
10. Somebody Else
11. Nothing More To Say
12. Live My Best Life
13. Lean On Me
14. Day One

Personnel:
Calvin Harris
***
21 Savage, Dua Lipa, Young Thug, Stefflon Don, Chlöe, Coi Leray, Charlie Puth, Shenseea, Normani, Tinashe, Offset, Busta Rhymes, Justin Timberlake, Halsey, Pharrell Williams, Jorja Smith, Lil Durk, 6lack, Donae'o, Snoop Dogg, Latto, Swae Lee, Pusha T : featuring artists
Aissa Benveniste : bass
Jesse Boykins III : chorus