AKB48によるレーベル移籍後初となるシングル「どうしても君が、好きだ」です。長らく在籍していたキング・レコードからユニバーサル傘下のEMIレーベルに移籍した事情はよく分かりませんけれども、新しいチームによる作品は心機一転するものがあるのでしょう。

 AKB48としてはこの作品が61枚目のシングルとなります。坂道グループに押され気味のAKB48ですけれども、本作品もオリコン週刊チャートで1位を獲得し、なんと48作連続の1位となり、嵐を抜いて歴代2位、あと一作でB’zに並びます。大したものです。

 とはいえ本作品も一番安いオフィシャル・ショップ盤に加え、タイプAからCまで3種類、それぞれに通常盤と初回限定盤がありますから、熱烈なファンは少なくとも7種類は揃えないといけません。もはやお布施の世界、マニアの世界です。推し活は楽しいことでしょう。

 私が買ったのはタイプCの初回限定盤です。どのタイプにも入っている「どうしても君が好きだ」とお料理選抜デザート部による「寝たふり」に加えて、タイプCには17期18期研究生による「あの夏の防波堤」が収録されています。フレッシュです。

 「どうしても君が好きだ」は王道メロディーによる青春ソングです。作詞はもちろん秋元康です。秋元による何らかの主張のある歌詞は好きではありませんが、こういう邪魔にならない他愛ない言葉を並べる時の秋元はさすがだなと思います。

 曲は今やデュオとなったナスカが提供しています。ナスカは2004年にデビューしており、ナスカ名義でのシングル曲も発表しているアーティストで、AKBへの楽曲提供は過去にも行ったことがあります。疾走感あふれるメロディーにはぐっときます。特にさびは絶品です。

 高校生活を描いたMVにしても青春そのものですし、ダンスもかっこいいです。振付はBTSなどにもかかわった振付師の井上さくらが担当しています。足首を持つところとかとても新鮮で、彼女たちの魅力を最大限に引き出すかっこいい振付です。ため息がでます。

 センターの本田仁美を筆頭に全部で16人の選抜メンバーによるパフォーマンスは本当にかっこいい。私も何と選抜全員の顔と名前が一致するようになりました。友人の名前すら忘れてしまうようになってきたにもかかわらず、大したものだと自分で自分をほめたいと思います。

 最近のAKB48はチーム制の廃止が発表されたり、アウト・オブ・48企画など、さまざまな方策が模索されるようになっています。プロダクション・チームとしては常に新しい刺激が必要なのでしょう。そんな中でこうした王道ソングが発表されるのはとてもよいことだと思います。

 常設劇場をもったアイドルですから、新奇な曲よりも寿命の長い王道曲を一つ一つ積み上げていくことが何よりも重要でしょう。ネットの世界も結局はコンテンツ次第です。あまりネット上の評判に一喜一憂せずに地道に頑張ってほしいものです。

 お料理選抜による「寝たふり」や研究生による「あの夏の防波堤」もよくできた曲だと思います。特にお料理選抜はなかなかシングル曲の選抜に選ばれないメンバーが中心になっており、何だか応援したくなります。もはや術中にはまってしまいました。

Doushitemo Kimi Ga Suki Da / AKB48 (2023 EMI)



Tracks:
01. どうしても君が好きだ
02. 寝たふり
03. あの夏の防波堤
04. どうしても君が好きだ instrumental
05. 寝たふり instrumental
06. あの夏の防波堤 instrumental

Personnel:
AKB48:
大西桃香、大森真歩、岡部麟、小栗有以、小田えりな、柏木由紀、倉野尾成美、佐藤綺星、千葉恵里、平田侑希、本田仁美、向井地美音、村山彩希、茂木忍、山内瑞葵、山崎空
石綿星南、岩立沙穂、小林蘭、篠崎彩奈、山邊歩夢、秋山由奈、新井彩永、太田有紀、工藤華純、久保姫菜乃、小濱心音、迫由芽実、成田香姫奈、橋本恵理子、畠山希美、布袋百椛、正鋳真優、水島美結、八木愛月、山口結愛