ピーター・フランプトンがついにジャケットに登場しました。アイドル視されることを嫌っていたフランプトンですが、前作、前々作が力作なのにヒットに結びつかなかったことを受けて、レーベル・サイドに説得されたのでしょうか。顔を出したもののまだ素直ではありません。

 ジャケットはヒプノシスがデザインしています。フランプトンの顔には水がぶちまけられており、その瞬間を切り取った写真になっています。これもまたアイドル扱いされることに対するささやかな反抗であるとも考えられそうです。真相は分かりませんが。

 本作品はフランプトンの3作目、「サムシング・ハプニング」です。何かが起こるぞというタイトルにはブレイクを期待するフランプトンとレコード会社の思いが込められているようです。ただし、残念ながらこの時点ではまだ何も起こりませんでした。あと少しです。

 フランプトンズ・キャメルからはキーボードのミック・ギャラガーが抜けてしまいました。したがって、この作品はフランプトンにリック・ウィルス、ジョン・シオモスのトリオ編成で制作されています。フランプトンはキーボードまで担当しており、キャメルの名前は消されてしまいました。

 この時期、フランプトンはキーボードにハード時代の盟友アンディ・ボウンを加えて、精力的にツアーを行っています。フランプトンはイギリス人ですけれども、なぜかアメリカを中心にまわっています。ギャラガーが抜けたのはそのせいではないかと勝手に推測してみます。

 本作品はフランプトンのセルフ・プロデュースとなっていますが、レコーディング・エンジニアはクリス・キムジーが起用されており、基本的にはソロ・デビュー当時から変わらない布陣です。サウンド面でもこれまでの作品を踏襲しています。

 とはいえ、前作までと比べると今一つ一般に評価が低いことは否めません。セールスも前作には及ばず、あいかわらず全米100位にすら入らない状況が続いています。おそらくは本作品にポップ成分が乏しく、ややこしめの曲が多いからではないでしょうか。

 三人で作った「ドゥービー・ワー」やアルバム・タイトルを副題に持つ「ベイビー」などはキャッチーではありますけれども、ヘヴィなロック調ですし、「ウォーター・フォール」や「セイル・アウェイ」も重めの曲となっており、いい曲ですけれどもきらきらしたポップとはほど遠いです。

 ちなみに後者二曲にはストーンズやキンクス、ザ・フーなどと渡り合ってきたニッキー・ホプキンスがキーボードでゲスト参加しています。やはりフランプトンはブリティッシュ・ロックの血統を受け継いだ人であるなと思わせる曲であり、演奏です。

 本作品にはカバー曲が含まれておらず、初めて全曲が自作曲となりました。ドゥービー・ブラザーズっぽい「ドゥービー・ワー」のみメンバーとの共作で、後はすべてフランプトンの曲です。ボーカルやギターにもこれまで以上にさまざまな試みがなされ、その苦悩がしのばれます。

 精力的なツアーは徐々に米国国内でフランプトンの人気を高めていきます。本作品でソロ3作品がそろい、ライヴのレパートリーも充実してきました。後は、キャッチーでポップな曲が加われば完成です。いよいよサムシングがハプニングする時が近づいてきました。

Somethin's Happening / Peter Frampton (1974 A&M)



Tracks:
01. Doobie Wah
02. Golden Goose
03. Underhand
04. I Wanna Go To The Sun
05. Baby (Somethin's Happening)
06. Waterfall
07. Magic Moon (Da Da Da Da Da!)
08. Sail Away

Personnel:
Peter Frampton : guitar, piano, organ, drums, percussion, vocal
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Rick Wills : bass, vocal
John Siomos (John Headley-Down): drums, percussion
Nicky Hopkins : piano