ピーター・フランプトンの二枚目のソロ・アルバムとみなされているアルバム「フランプトンズ・キャメル」です。当初の名義はフランプトンズ・キャメルでしたから、バンドによる作品なのですが、キャメルのアルバムはこれ一作でもあり、今ではフランプトンのソロ扱いされています。

 デビュー作を発表したフランプトンは、まもなくツアー・バンドを結成して米国ツアーに出かけます。最初の登場は1972年9月、ニューヨークでのJ・ガイルズ・バンドのサポートでした。このツアー・バンドの名前がフランプトンズ・キャメルです。

 メンバーはキーボードにミック・ギャラガー、ベースにリック・ウィルス、ドラムにジョン・シオモスで、ここにフランプトンを加えた4人組でした。キャメルは1972年12月には早くもスタジオ入りしてバンド名を冠した本作品を制作することになります。

 ウィルスは前作にも参加していました。後にスーパーバンド、フォリナーとなる御仁です。ギャラガーは元アニマルズで、後にイアン・デューリーのブロックヘッズとなります。シオモスはアメリカのドラマーで、トッド・ラングレンの「ハロー・イッツ・ミー」に参加していました。

 アルバム制作にはこれまたデビュー作にも参加していたフランク・カリロが一部ギターとコーラスで参加していますけれども、それ以外はすべてバンドによって制作されています。この時点ではフランプトンはバンドを続けるつもりだったのかもしれませんね。

 アルバムは「アイ・ガット・マイ・アイズ・オン・ユー」で始まります。前作の冒頭曲とは異なり、しっかりバンド・サウンドによるヘヴィーなロック・チューンです。ただし、アルバム全体がそうした曲調で統一されているわけではありません。基本的には前作の延長にあります。

 フランプトンは新人でもありませんから、二作目の壁などないのでしょう。本作品には前作にもましていい曲が多いです。結果的にはまるでヒットしませんでしたけれども、今から振り返ってみれば、後の大成功を予感させるアルバムであると高く評価されています。

 とりわけ、モンスター・アルバム「フランプトン・カムズ・アライヴ」の最後を飾る二曲、「風はどこへ」と「紫の夜明け」の人気が高いです。なお、後者は本作品がエレクトリック・レディ・スタジオで制作されたから付けられた邦題でしょう。原題とはまるで関係ありません。

 とはいえ、フランプトンも明らかにローリング・ストーンズを意識した「ホワイト・シュガー」なる曲をここに収録していますから、邦題の遊びも許されます。この曲はサウンドにもそこはかとなくストーンズを感じる曲で、フランプトンのストーンズ愛がつまっています。

 本作品唯一のカバー曲はスティーヴィー・ワンダーが半年前に発表した「トーキング・ブック」に入っていた「アイ・ビリーヴ」です。なかなか勇気ある選曲ですが、これを見事に自家薬籠中のものとしています。フランプトンはカバーのセンスが抜群です。

 1970年代のポップ寄りのロック・サウンドの傑作だと思います。しかし売れませんでした。美少年としてのアイドル人気を嫌ったからと思われますが、ジャケットで顔出しをしない選択が足を引っ張ったのかもしれません。売れる売れないの境目なんてそんなものでしょう。

Frampton's Camel / Peter Frampton (1973 A&M)



Tracks:
01. I Got My Eyes On You
02. All Night Long
03. Lines On My Face 風はどこへ
04. Which Way The Wind Blows
05. I Believe (When I Fall In Love It Will Be Forever)
06. White Sugar
07. Don't Fade Away
08. Just The Time Of Year
09. Do You Feel Like We Do 紫の夜明け

Personnel:
Peter Frampton : guitar, drums, piano, organ, clavinet, vocal
Mick Gallagher : piano, organ, clavinet, vocal
Rick Wills : bass
John Siomos : drums, percussion
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Frank Carillo : guitar, chorus