驚くべきことにコントロールド・デスの国内盤は本作品が初めてなのだそうです。ここまでに発表された10作近くあるコントロールド・デス名義でのアルバムはすべて海外レーベルからの発表だということのようです。日本はノイズ先進国だったのに残念です。

 本作品は「セレクテッド・イーヴィル・アンド・デス・ワークス」という題名が示す通り、2018年から19年にかけて録音され、2019年に海外のレーベルからリリースされていた3作品を収録した編集盤です。その際には未発表曲も2曲追加されました。

 発表したのはドッツマークなる日本のレーベルです。2001年に創立されており、主宰者はYstk Hmことヒラノヤスタケで、彼はシカクなるノイズ・プロジェクトなどで精力的にライヴパフォーマンスを行っています。2019年春には海外ツアーも敢行しています。

 シカクの開始以来の価値観は「虚無」と「失調」だそうですから推して知るべしです。コントロールド・デスの暗黒ノイズっぷりはこのレーベルとの親和性が極めて高いということが分かります。やはり日本にはまだノイズ先進国の矜持が残っているようです。

 本作品に収録された曲はまず「イーヴィル・ディスチャージ(パート1&2)」です。これはロサンゼルスのレーベル、オクセンから発表されたソノシートが音源です。オクセンとドッツマークは他にもシシー・スペイセックなどの作品を発表しあうなど、友好関係にありそうです。

 本作品にはこれと同時期に録音されたと思われるものの未発表になっていた「イーヴィル・ディスチャージ(パート3&4)」も収録されています。ソノシートだけに曲は短く、キャッチーなハーシュ・ノイズ・サウンドとなっています。見せ場が多いです。

 続いてデスベッド・テープスというレーベルからカセットテープで発表された「ブラック・ルシファー・ライジング」収録の2曲、「アンタイトルド」とタイトル曲です。いずれも15分弱。25本限定のボックス・セットには骸骨のモデルと黒いキャンドルなどが封入されていたそうです。
 
 15分あるとじっくりとサウンドに向き合えます。とりわけタイトル曲はノイズによる除夜の鐘とでも言いたくなる作品です。そういえば若い時にケネス・アンガーの「ルシファー・ライジング」を見たことを思い出しました。この音楽の方が映像にあっているように思います。

 3分弱の未発表曲「デス・トリップ」をはさんで、最後はどちらも山崎マゾのマゾンナとコントロールド・デスのスプリット・アルバムから「プレイヤー・フォー・ホーリー・デス」です。オーストラリアのレーベル、トラップドア・テープスからカセット・テープで発表されています。

 「聖なる死のための祈り」らしく、インダストリアルなノイズによる抑揚を抑えたドローンが中心に座った作品です。楽曲の持つ不穏な空気は緊張感をはらんでいて、締めくくりにふさわしいサウンドです。プロジェクト自体が「死」をテーマにしていますから重いです。

 コントロール・デスはこの後も大量リリースを続けており、その全貌を追うことはなかなか難しいです。本作品にはプロジェクトのロゴをあしらったトートバッグが付いてきました。バッグをもって彼の作品を買ってまわれということでしょうか。さすがは私のアイドルです。

Selected Evil and Death Works 2018-2019 / Controlled Death (2020 Dotsmark)



Tracks:
01. Evil Discharge (Pt. 1&2)
02. Evil Discharge (Pt. 3&4)
03. Untitled
04. Black Lucifer Rising
05. Death Trip
06. Prayer For A Holy Death

Personnel:
山崎マゾ