ラヴ・サイケデリコの登場は衝撃的でした。つらつら考えるとジャミロクワイが登場したときに受けた感じに似ています。懐かしいけれども新しいサウンド。ジャミロクワイは古のソウルでしたけれども、ラヴ・サイケデリコの場合は60年代から70年代のロックです。

 バンドは2000年4月にシングル「レディ・マドンナ~憂鬱なるスパイダー~」でデビューしました。ここから「ユア・ソング」、「ラスト・スマイル」とシングルが続くと、ラヴ・サイケデリコの名前は徐々に音楽ファンの間で浸透、満を持して発表されたデビュー作が本作品です。

 デビュー・アルバムなのに「ザ・グレイテスト・ヒッツ」という何とも人をくったタイトルがつけられました。確かにそれまでのシングル曲とカップリング曲がアルバムの半分を占めているので僭称ではありません。ただ、音楽同様、昔のロックの感覚を感じるしぐさではありました。

 このアルバムは何と200万枚を売り上げるという驚異的な数字を記録しています。この年はCDがよく売れた年なので、それでも年間チャートで9位どまりなのですが、デビュー・アルバムとしてはケミストリーを抑えてこの年に一番売れた作品でした。

 ラヴ・サイケデリコは当初メンバーが謎に包まれており、その音楽性もあいまってどんな人が演奏しているのかいろいろ想像をたくましくしたものです。当時としてもすでに四半世紀以上前のロックに触発された音楽でしたから、ベテランかもしれないとか。

 しかし、正解は大学のサークルで1997年に結成されたバンドでした。しかもボーカルのクミとギターのナオキのデュオだというではありませんか。ロック・バンド形態を考えていたようですが、たまたま二人の時に作ったデモが目に留まってのデュオ・デビューでした。

 クミはヴォーカルとギター、ナオキはギター、ベースその他を担当しており、ドラムは打ち込みの模様です。2000年だとデュオでも普通にバンド・サウンドにできますし、若干、当時としては特殊な音楽趣味ですから、結局のところデュオは大正解だったかもしれません。

 二人のサウンドの特徴は、公式サイトの表現を借りると「NAOKIの卓越したギターテクニックとKUMIのヴォーカルスタイルが、印象的なリフ、日本語と英語が自由に行き交う歌詞によって、LOVE PSYCHEDELICO独自の音楽スタイルを確立している」となります。

 楽曲はビートルズやローリング・ストーンズのサイケデリックな側面を彷彿させます。ベイエリアのディープなサイケデリック・サウンドの風味もあります。しかし、誰かを模倣しているというわけではなく、単なる懐古趣味というわけでもありません。

 昔のスタイルのエッセンスを2000年のサウンドに加えたサウンドです。そこにまずは唸らされました。耳にすっと馴染んでくるのに新しい。そして英語と日本語がごくごく自然に交じり合う歌詞を歌うボーカルがもう完全に楽器の一部です。それも最高にエモい楽器。

 アルバム・タイトル通り、ヒットしたシングル三連発がやはり際立っています。とりわけ私は「ラスト・スマイル」のさびの部分が大好きです。こういうころころ転がるメロディーを歌うボーカルはたまりません。ともかくも日本をざわつかせた大型新人の登場でした。

The Greatest Hits / Love Psychedelico (2001 ビクター)



Tracks:
01. Lady Madonna ~憂鬱なるスパイダー~
02. Your Song
03. Last Smile (extension mix)
04. I Mean Love Me
05. Moonly
06. Are You Still Dreaming Ever-Free?
07. I Miss You
08. ノスタルジック '69
09. These Days
10. Low (ver.1.1)
11. A Day For You

Personnel:
Kumi : vocal, guitar
Naoki : guitar, bass
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清水俊也 : keyboards