ヴァージン・レコードに移籍してからジャパンは大いに人気を博しました。それまでに在籍していたアリオラ・ハンザ・レコードはこの人気に便乗しない手はないとばかりに、自社が抑えている楽曲をさまざまに編集した編集盤を数多く発売していきます。

 本作品「アセンブラージュ」はその第一弾にして、唯一バンド・メンバーとの相談を経て発表されたアルバムです。この時期のジャパンにはアルバム未収録のシングル曲があり、そちらがむしろ代表曲だったりしますから、ありがたい作品ではあります。

 ジャケットはぐっと後期のジャパンの美意識によった写真が使われています。これはロック写真の世界では有名なフィン・コステロの作品なのですが、実は彼は二枚目の「苦悩の旋律」のジャケ写も担当しています。ディレクションの違いでまるで変るものですね。

 さて、本作品には、デビュー作「果てしなき反抗」から1曲、二作目の「苦悩の旋律」から2曲、三作目の「クワイエット・ライフ」から2曲が収録され、残りの5曲はバージョン違いが1曲、アルバム未収録曲が4曲というとても丁寧な選曲がなされています。

 しかも、A面は2作目までの期間、B面はそれ以降と時代区分がされています。最初の2作品はやんちゃなジャパンでレイ・シンガー時代、3作目以降はポスト・シンガー時代ですから、これまた丁寧な曲順となっています。後の編集盤に比べてとてもしっかりしています。

 ここではやはりB面が興味深いです。まずはアルバム未収録ながらジャパンの代表曲となっている「ライフ・イン・トウキョウ」が光ります。この曲はディスコの黒幕ジョルジオ・モロダーをプロデューサーに起用するという大冒険作品です。

 もともとは1979年にシングルとして発表されましたがまるで売れませんでした。それが、1981年、82年と二度にわたり再発されて、最後はそこそこ売れたというレコード会社の執念を感じる曲です。ジャパンは日本で人気があったことを思えば、これも当然です。

 モロダーらしいディスコ・リズムに彩られた楽曲で、ちょうど前期と後期をつなぐ作風です。一皮むけるきっかけとなった曲でしょう。続く「ヨーロピアン・サン」はもともとそのB面曲でこちらは地続きながら、ジャパンとマネージャーのサイモン・ネピア=ベルのプロデュースです。

 さらに驚くのは「セカンド・ザット・エモーション」のカバーです。モータウンを代表する超有名曲を見事にジャパン節にしています。これもシングルとして発表された際には不発でしたが、本作品発表後に再発されてトップ10入りするヒットになっています。

 カバーではもう一曲「オール・トゥモロウズ・パーティーズ」がアルバムとは異なるバージョンで収録されています。ディスコにソウル、そしてヴェルヴェッツ。多彩なカバーですけれども、全部合わせるとジャパンのサウンドのルーツが知られます。素晴らしい選曲ですね。

 初期のとげとげしたサウンドが、徐々に丸みを帯びてきて、見事に落ち着いたサウンドに収斂していくさまがよく見て取れる素晴らしい編集盤だと思います。わずか3年でイギリスを代表するバンドに成長したジャパンの記録として高い価値をもった作品です。

Assemblage / Japan (1981 Hanza)

*2014年9月16日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Adolescent Sex 果てしなき反抗
02. Stateline
03. Communist China
04. ...Rodesia 熱きローデシア
05. Suburban Berlin 郊外ベルリン
06. Life In Tokyo
07. European Son
08. All Tomorrows Parties
09. Quiet Life
10. I Second That Emotion

Personnel:
David Sylvian : vocal, synthesizers. piano, guitar
Mick Karn : bass, oboe, sax, recorder
Steve Jansen : drums, synthesizer, percussion
Richard Barbieri : synthesizer, sequencer, piano
Rob Dean : guitar, ebow