日本だとあまりとやかく言われませんが、厳格なキリスト教徒が力を持っている米国ではこのジャケットは議論の的となっています。お稚児さんの行列でのお化粧みたいなものですし、眠そうな可愛らしい女の子の写真ともとれるわけですが、挑発的であることは間違いありません。

 こんなジャケットからは悪魔の音楽が流れてくるのが自然な気がしますが、本作品の主、フォトメイカーは麗しいパワー・ポップのスーパー・グループなのでした。セルフ・タイトルのこのアルバムは美しいコーラスによるきゅんきゅんする曲が並んでいます。

 フォトメイカーは1977年に結成されました。中心となったのはロックの殿堂入りを果たしている1960年代に活躍したバンド、ラスカルズの二人、ジーン・コーニッシュとディノ・ダネリです。ここに70年代にヒットを飛ばしたラズベリーズからウォーリー・ブライソンが加わります。

 ラスカルズとラズベリーズのメンバーが中心になったことからフォトメイカーはスーパー・グループと言われたのでした。とはいえ両バンドの中心人物、フェリックス・キャバリエにエリック・カルメンは加わっていないので、スーパーというのは少々大げさでした。

 この3人に加えてレックス・マルセッシ、フランキー・ヴィンチの二人を加えて、フォトメイカーは5人組でスタートしました。この二人は特にめぼしいキャリアがあったわけでもなさそうですが、何と本作品の大半の曲を書き下ろしています。きらきらキャリア組以上の活躍です。

 本作品はフォトメイカーのデビュー・アルバムです。シンプルにバンド名をタイトルにしているので、自信作だと思われます。日本盤では邦題として「ファースト・スナップ」がつけられました。やや女の子の妖しい表情とミスマッチな邦題ですが、サウンドにはぴったり合っています。

 アルバムの1曲目は「ホエア・ハヴ・ユー・ビン・オール・マイ・ライフ」です。フォトメイカーといえばこの曲という彼らの代表曲から始まります。シングル・カットされて全米チャートでは81位を記録したにすぎませんが、息長く愛されるパワー・ポップの名曲です。

 この曲にはバンドの特徴がよく出ています。ウォーリーとレックスの二人による分厚いギターのハーモニー、そしてこの二人にキーボードのフランキーとベースのジーンの二人を加えた四人によるコーラス・ワーク。曲はキャッチーなリフのパワー満点のポップス。

 この曲のみバンド外のアーティストによる曲ですが、他の曲はすべてバンドのオリジナルです。そこに切れ目がないところがまたフォトメイカーらしいです。デビュー・アルバムにしてバンドの個性が確立しています。これがフォトメイカーだと言わんばかりのサウンドです。

 よく引き合いに出されるのが本家ラズベリーズであったり、コーラスはビートルズ、曲調はトッド・ラングレンだったりとポップのマエストロたちばかりです。アメリカが出てこないのはこちらがエレクトリック一直線だからでしょう。力強いギター・サウンドです。

 本作品は全米88位と大ヒットとはとうてい言えませんけれども、私と同年代の方であればその順位以上に印象が強いのではないでしょうか。パワー・ポップの教科書のような良い曲満載ですから、聴いたことがなくても懐かしく感じると思います。そっとしまっておきたい作品です。 
 
Fotomaker / Fotomaker (1978 Atlantic)



Tracks:
01. Where Have You Been All My Life
02. Can I Please Have Some More
03. All There In Her Eyes
04. Two Can Make It Work
05. The Other Side
06. Say The Same For You
07. Plaything
08. All These Years
09. Pain
10. Lose At Love

Personnel:
Wally Bryson : guitar, vocal
Lex Marchesi : guitar, vocal
Frankie Vinci : flute, keyboards, vocal
Gene Cornish : bass, vocal
Dino Danelli : drums