バッド・カンパニーは順調にアルバムを発表していきます。本作品はセカンド・アルバムから1年足らずで発表されたサード・アルバム「ラン・ウィズ・ザ・パック」です。ジャケットには狼の家族が描かれました。パックは狼などの群れの意味ですから、そのまんまです。

 メーカー公式サイトによれば「ブリティッシュ・ロックの誇りと自信を背に、アメリカ大陸で鍛え上げた屈強のサウンドが冴えわたる、絶頂期を迎えたバッド・カンパニーのサード・アルバム」ということになっています。まさに絶頂ということでしょう。

 サウンドは基本的にデビュー作から変わりません。基本に立ち返ったかのような泥臭くて重いロックが展開します。作品は広く受け入れられ、全英4位、全米5位を獲得するミリオン・セラーになっています。みんなで突っ走ってきたバッド・カンパニーの勢いは止まりません。

 もともと老成していたポール・ロジャースのボーカルはさらに円熟味を増し、サイモン・カークのドラムも独特のタイム感覚に磨きがかかっています。ミック・ラルフスのあまりソロを弾かないギター、ボズ・バレルのロックのお手本のような重いベースもかっこいいです。

 このバンドにはこれみよがしにソロをとるミュージシャンがいません。別のグループで名を成した人々によるスーパーグループとは思えない融解ぶりです。これぞバンド・サウンドということで、中高生のバンドが当時バドカンに憧れたのもよく分かります。

 バッド・カンパニーは自分たちの音楽と一体化しています。俯瞰的ないしは客観的にサウンドを眺めるバンドも多い中で、自分たちの音に頭の先まで埋まっています。本作品ではストリングスを用いた曲もあるのですが、そういう工夫が似合いません。

 これはこれでロックの一つの理想であろうかと思います。アメリカで近いバンドと言えばCCRかもしれませんが、四人の実力がより拮抗しているという意味で、バドカンの方が群れ感が強いと思います。下手をすると疎外感を味わう聴衆も出てきそうです。

 本作品からシングル・カットされて最もヒットしたのはカバー曲「ヤング・ブラッド」です。1950年代後半にR&Bボーカル・グループのコースターズがヒットさせた楽曲です。ディープなブルースでないところがやや意外ですが、全米20位のヒットになりました。

 タイトル曲や「ハニー・チャイルド」もカットされましたが、大きなヒットにはなりませんでした。とはいえ、「シルバー・ブルー&ゴールド」や「リヴ・フォー・ザ・ミュージック」などのアルバム曲がラジオで頻繁にかかるなど、いつものバドカンのパターンは健在でした。

 本作品の評価の中には前作、前々作と同工異曲だとして厳しい点をつけるものも散見されます。当時、少なくとも日本では確かに前二作ほど話題にはなりませんでした。私も完全にスルーしておりました。最大の話題はクイーンでしたから、若干陰に隠れた感がありました。

 とはいえ、そんな時代も遠く過ぎ去り、裸で目の前にある本作品はなかなかの傑作であることをしみじみと感じます。クイーンとは異なる、バドカンのストレートなロックの深みというものが歳とともに身に染みるようになってきました。いいアルバムです。

Run With The Pack / Bad Company (1976 Swan Song)



Songs:
01. Live For The Music
02. Simple Man
03. Honey Child
04. Love Me Somebody
05. Run With The Pack
06. Silver, Blue & Gold
07. Young Blood
08. Do Right By Your Woman
09. Sweet Lil' Sister
10. Fade Away

Personnel:
Paul Rodgers : vocal, guitar, piano
Mick Ralphs : guitar, keyboards
Boz Burrell : bass
Simon Kirke : drums