私立恵比寿中学のホワイト・アルバムです。7枚目のアルバムですけれども、ここに来て初めてセルフ・タイトルとなり、さらにアイドル・グループなのに真っ白なジャケットにシンプルにグループ名を書いただけのジャケットはまさにビートルズのホワイト・アルバムです。

 今年はメジャー・デビュー10周年の記念の年ということですが、少し前にデビュー10周年は祝っていました。重ねて祝うには理由があります。このアルバムからエビ中は3人の新メンバーを加えて9人組となったんです。なお、その後柏木ひなたが卒業して今は8人です。

 アルバム発表を報じる記事などを見ていて驚いたことがあります。それはエビ中のことを当たり前のように歌ウマ・アイドルとして紹介している記事が多いことです。もともと歌もダンスもぐだぐだな学芸会っぽさを売りにしていたとは思えない変貌ぶりです。

 確かに大傑作「エビクラシー」の頃から、エビ中のメンバーの歌唱力には目を見張るものがあります。やはり若い子たちが一生懸命に努力すれば歌も上手くなるものなのですね。長年のファンとしては大変嬉しいことで、目頭が熱くなります。

 アルバムはいつものようにバラエティ豊かな楽曲がてんこ盛りです。今回参加しているソング・ライターは、お馴染みのたむらぱんこと田村歩美などに加えて、初めて起用された作家も多いです。同じ作家で固めないのがエビ中の面白いところでもあります。

 リード・シングルとなった「エニタイム・エニウェア」は大橋ちっぽけ、ネット発の今をときめくシンガーソングライターです。「ハッピーエンドとそれから」は3ピースロック・バンドのサウシー・ドッグの石原慎也によるシンプルなバンドサウンドの曲です。

 「シュガーグレーズ」はオートチューンを使ってボーカルを存分に加工したテクノ曲で、作者はトリエナです。「さよなら秘密基地」はボカロPとしても活躍する「けんたあろは」の曲ですし、「宇宙は砂時計」はキタニタツヤの作品です。20代後半のアーティストが多いですね。

 とまあこのように多くのアーティストが曲を提供しており、ディスコからテクノからバラードから元気いっぱいソングまで、とにかくさまざまな曲調の曲が詰め込まれており、それをエビ中の9人がしっかりと自分のものにして歌いこなしています。

 かつてのエビ中のような面白ソングがないのが少し寂しいのですけれども、正面から曲に向き合って歌い上げる正統派アイドルとしてのエビ中もいいものです。久しぶりに現役中学生が混じっていますけれども、その新メンバーもしっかりとメンバーとして溶け込んでいます。

 しかし、無事にアルバムが発表されて本当に良かったです。安本彩花が大病から復帰できて本当に良かった。学芸会アイドルだったエビ中は幾多の試練を乗り越えて、こんな素敵なアルバムを発表するようになりました。いや、本当に良かった。

 そんな彼女たちをしっかり見ているのはやはりたむらぱん。安本の休養中に発表された「イエローライト」の歌詞を聴いているとうるうるしてしまいます。足踏みしてもそこには意味があるというメッセージは結果的にエビ中がこのアルバムで身をもって証明しました。

Shiritsu Ebisu Chugaku / Chiritsu Ebisu Chugaku (2022 SME)



Songs:
01. Anytime, Anywhere
02. イエローライト
03. きゅるん
04. ハッピーエンドとそれから
05. トキメキ的週末論
06. シュガーグレーズ
07. さよなら秘密基地
08. ナガレボシ
09. 宇宙は砂時計
10. イヤフォン・ライオット

Personnel:
真山りか、安本彩花、星名美玲、柏木ひなた、小林歌穂、中山莉子、桜木心菜、小久保柚乃、風見和香 : vocal
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*大橋ちっぽけ、田村歩美、TomoLow、板井直樹、山崎佳祐、TORIENA、けんたあろは、ArmySlick : sound produce
能村亮平、北村望、川口千里、嶋英治 : drums
安達貴史、北村雄太、田中雄大 : bass
生本直毅、渡辺裕太、杉村謙心、黒田晃年 : guitar
モチヅキヤスノリ、平畑徹也 : keyboards
笹川真生 : programming et all
野村陽一郎 : guitar, programming