アヤ・エイトプリンスがクラウドファンディングの支援を受けて制作発表したファースト・アルバム「ディアー」です。クラファンは2020年秋に実施されています。ソロとなっていきなりコロナ禍に直面する試練の乗り越え方としてはまことに正しいと思います。

 彼女は今をときめくアイドル事務所WACKに所属していたアーティストで、もともとはBiS、カミヤサキとのトレードでギャングパレード、企画ものセイント・セックスに所属していました。その後、戦力外通告を受けて、WACKを離れ、フリーで活動しています。

 八王子出身だからエイトプリンスといういかにもWACKらしいステージネームとなったアヤプリですけれども、事務所を離れてもそのまま芸名を踏襲したのは、それほどこの名前が定着していたということでしょう。ファースト・サマーウイカと同じです。

 アヤプリはもともとWACKの中では一人際立って正統派アイドルでした。要するにハロプロに在籍していたとしてもおかしくない佇まいでした。戦力外通告は驚きましたが、あまり気にしすぎるのはWACKの思うつぼにはまることになるのでいい加減にしておきましょう。

 BiSが解散したのが2019年5月で、それ以降の彼女は特定の事務所に所属せずに、歌手、モデル、役者としてフリーで活動しています。歌手としての最初のシングルは2020年4月に発表された「パンクスカスカパラダイス/お疲れ様ラプソディ」でした。

 本作品はそれに続くフルアルバムです。コロナ禍でライヴが思うにまかせない中で、窮余の一策として始めたクラファンは目標100万円のところ380万円近くを集める大成功です。クラファン経験者の私には380万円の重みがよく分かります。

 支援のありがたみが身に染みたことでしょう、アルバムのタイトルは「ディアー」、「親愛なるあなたへ送る」という意味が込められています。この心もちはアルバム全体にはっきりと表現されています。聴く人との感情的な距離がとても近い気がします。

 アルバム全10曲のうち7曲が彼女の作詞です。リード曲の「ディアー」ではWACK時代を振り返っているかのような重い詞を書いているかと思えば、「パンクスカスカパラダイス」では高気圧サニーガールの本領を発揮した楽しい詞になっていたりと王道を歩んでいます。

 作曲も3曲で手掛けており、スカからバラードまで自身でもジャンルを越えた曲を作っています。作曲陣には映画「達人」の音楽などで知られる上田壮一、元クロスオーバー・カンパニーの越前谷直樹、シンガーソングライターのKumi、Beの浜崎快声などが起用されています。

 とにかくさまざまなジャンルの曲がつまっており、フリーとはいえ、さすがにしっかりした作りになっています。さすがはアヤ・エイトプリンスです。WACK時代とは異なり、幅広いジャンルに対応して、けっして負けない実力を感じます。正統派アイドルのアルバムです。

 私は彼女の声が好きなんです。ほんの少しハスキーが入ったパワフルな声は、しっとりと歌い上げてもさらりとはっちゃけても、しっかりと胸に響きます。このまま真っ直ぐに活動を続けていってほしいものです。次のクラファンには是非協力したいと思います。

Dear / Aya Eightprince (2021 AiM)



Songs:
01. アンサー
02. 君色メロディ
03. Bring Me Up!!
04. Ella
05. お疲れ様ラプソディ
06. パンクスカスカパラダイス
07. Dawn
08. Beautiful
09. Dear
10. Dream Again

Personnel:
アヤ・エイトプリンス : vocal, sax
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Nozomu Sasaki、上田壮一、オル、浜崎快声、Takayuki Kato、越前谷直樹、Kanon : sound produce
Hanna Nomura : guitar
Katsuyuki Toyofuku : bass
Hiroyuki Kurose : bass
MICO : chorus
Koki Matsumoto : guitar
Wakazaemon : bass
Kozi Mukai : piano