1974年に発表されたアルバム「ビッグ・ファン」です。発売順でいえば、「オン・ザ・コーナー」の後になりますが、録音順でいえば「ジャック・ジョンソン」の前になります。レーベルがマイルス人気を当て込んで未発表録音を2枚組に詰め込んだ作品といえます。
この当時のジャズのレコードにはどこまで演奏者の意図が反映されているのかよく分かりません。アルバムをまとめようとして録音しているわけではないからなのでしょうが、カタログを追っていると不思議な作品に出合うものです。
本作品ではさらにCDでリイシューされた際に、4曲が追加で収録されており、その中の1曲「リコレクションズ」が映画のサントラに使われるなどして、有名になりましたから、なおのことややこしい。リイシュー後に再評価されたアルバムなんです。
オリジナルは2枚組に片面1曲ずつの計4曲が収録されました。このうちA面の「グレイト・エクスペクテイションズ」とD面の「ロンリー・ファイヤー」が1969年11月のセッションで録音された曲です。スティーヴ・グロスマンとアイアート・モレイラの初お目見えです。
この頃、ウエイン・ショーターが抜けたため、代わりのサックスが見つかるまで、しばしバンドは解散状態にありました。そこでウエインの代わりとして雇われたのがブルックリン出身の若い白人サックス奏者グロスマンです。
アイアート・モレイラはブラジル生まれで、キャノンボール・アダレイのバンドでジョー・ザヴィヌルと一緒に演奏していた縁での参加です。マイルスは彼のパーカッションを大いに気に入り、「あれからバンドには必ずパーカションを入れるようになった」とのことです。
このセッションにはシタールとタンブーラの奏者も参加しているのですが、残念ながらモレイラのパーカッションほどは気に入らなかったようです。タンブーラはドローン的に使われていますが、シタールはまるで目立ちません。マイルスのミュート・トランペットがシタール的ですし。
なお、「グレイト・エクスペクテイションズ」は途中からザヴィヌルの曲「オレンジ・レイディ」に遷移していきます。当初はこの点がクレジットされていませんでしたが、CD化後にはしっかり、両曲がメドレーであることが記載されるようになりました。
C面の「ゴー・アヘッド・ジョン」は1970年3月の「ジャック・ジョンソン」セッションからの未発表曲で、マイルス、グロスマン、ジョン・マクラフリン、デイヴ・ホランド、ジャック・デジョネットのクインテットによる演奏です。ピアノ抜きでギターが活躍する曲です。
問題はB面の「イーフェ」です。参加しているエムトゥーメの娘さんの名前をタイトルにした曲で、1972年6月の「オン・ザ・コーナー」セッションからの収録です。他の3曲とはずいぶんと趣きを異にするファンク・チューンです。ロック耳には馴染む曲ではあります。
アルバム単位ではなく片面ずつ聴いているとなかなか楽しいアルバムです。この頃のマイルス・バンドはメンバーも出入りが激しいですし、音楽そのものも変化が激しい時期でしたから、その変化をアルバム一枚に記録したという意味では面白い作品かもしれません。
参照:「マイルス・デイヴィス自伝」中山康樹訳(シンコー・ミュージック)
Big Fun / Miles Davis (1974 Columbia)
この当時のジャズのレコードにはどこまで演奏者の意図が反映されているのかよく分かりません。アルバムをまとめようとして録音しているわけではないからなのでしょうが、カタログを追っていると不思議な作品に出合うものです。
本作品ではさらにCDでリイシューされた際に、4曲が追加で収録されており、その中の1曲「リコレクションズ」が映画のサントラに使われるなどして、有名になりましたから、なおのことややこしい。リイシュー後に再評価されたアルバムなんです。
オリジナルは2枚組に片面1曲ずつの計4曲が収録されました。このうちA面の「グレイト・エクスペクテイションズ」とD面の「ロンリー・ファイヤー」が1969年11月のセッションで録音された曲です。スティーヴ・グロスマンとアイアート・モレイラの初お目見えです。
この頃、ウエイン・ショーターが抜けたため、代わりのサックスが見つかるまで、しばしバンドは解散状態にありました。そこでウエインの代わりとして雇われたのがブルックリン出身の若い白人サックス奏者グロスマンです。
アイアート・モレイラはブラジル生まれで、キャノンボール・アダレイのバンドでジョー・ザヴィヌルと一緒に演奏していた縁での参加です。マイルスは彼のパーカッションを大いに気に入り、「あれからバンドには必ずパーカションを入れるようになった」とのことです。
このセッションにはシタールとタンブーラの奏者も参加しているのですが、残念ながらモレイラのパーカッションほどは気に入らなかったようです。タンブーラはドローン的に使われていますが、シタールはまるで目立ちません。マイルスのミュート・トランペットがシタール的ですし。
なお、「グレイト・エクスペクテイションズ」は途中からザヴィヌルの曲「オレンジ・レイディ」に遷移していきます。当初はこの点がクレジットされていませんでしたが、CD化後にはしっかり、両曲がメドレーであることが記載されるようになりました。
C面の「ゴー・アヘッド・ジョン」は1970年3月の「ジャック・ジョンソン」セッションからの未発表曲で、マイルス、グロスマン、ジョン・マクラフリン、デイヴ・ホランド、ジャック・デジョネットのクインテットによる演奏です。ピアノ抜きでギターが活躍する曲です。
問題はB面の「イーフェ」です。参加しているエムトゥーメの娘さんの名前をタイトルにした曲で、1972年6月の「オン・ザ・コーナー」セッションからの収録です。他の3曲とはずいぶんと趣きを異にするファンク・チューンです。ロック耳には馴染む曲ではあります。
アルバム単位ではなく片面ずつ聴いているとなかなか楽しいアルバムです。この頃のマイルス・バンドはメンバーも出入りが激しいですし、音楽そのものも変化が激しい時期でしたから、その変化をアルバム一枚に記録したという意味では面白い作品かもしれません。
参照:「マイルス・デイヴィス自伝」中山康樹訳(シンコー・ミュージック)
Big Fun / Miles Davis (1974 Columbia)