力作だったライヴからほぼ2年ぶりに発表されたジョニー・ウィンターの5作目のスタジオ・アルバムです。メジャーであるコロンビアと契約してからは4作目となります。タイトルは「スティル・アライヴ・アンド・ウェル」、まだ生きてて元気だよ、というメッセージです。

 何でそんなメッセージかというと、その2年間というもの、ジョニーはヘロイン中毒に陥ってしまい、その治療を行っていたという事情があったからです。マネージャーの提案もあって、ドラッグ中毒治療の広告塔的な役割も果たしていたそうです。

 ジョニーは、ブルースだけでは売れないとの助言を受け入れて、すでに前作にてトリオの二人と別れ、リック・デリンジャーのマッコイズとロック・アルバムを発表しています。このブルースとポップの間の葛藤がドラッグ中毒の一つの原因のようです。

 それを考えると、巨額の契約金が良かったのか悪かったのか。100万ドルももらわなければレーベル側もそこまでヒットを求めることもなかったでしょうに。好きなブルースを地道に演奏し続けるという選択肢もあったはずです。後にそうなるわけですが。

 とはいえ、ドラッグ中毒から立ち直ったジョニーは、ポップ路線のリック・デリンジャーとのパートナーシップを続けていきます。本作品でもプロデューサーにリックを起用していますし、元マッコイズのベーシスト、ランディー・ジョー・ホブスも引き続いての起用です。

 ドラムはライブ同様、元マッコイズではないリチャード・ヒューズに代わりましたけれども、今回はリックつながりと思われるトッド・ラングレンやマーク・クリングマンなどがゲストで参加しています。リックは一部でギターも弾いています。

 この頃、リックは弟のエドガー・ウィンターのバンドにも在籍していましたから、ウィンター兄弟にとっては大きな存在です。彼の持ち込んだポップなセンスはブルース一筋のジョニーの音楽をポップに変化させたものと思います。

 本作品を聴くと、多くの人はジョニーがタイトルに込めたメッセージに頷くことになります。2年間のブランクを感じさせない、リフレッシュしたジョニーのギターとボーカルが堪能できます。なんたってまだ20代のジョニー・ウィンターです。回復も早い。

 アルバムにはローリング・ストーンズのカバーが2曲あります。一つは「シルバー・トレイン」で、こちらは本家よりも早い発表です。もう一曲は「レット・イット・ブリード」です。どちらもジョニーはボーカルをミックに寄せていて微笑ましいです。

 ここらはブルースをベースとしたロックとして親和性も高いですが、リック作の「チープ・テキーラ」などはトッドのメロトロンが活躍する渋い曲で、ジョニーはアコギ、リックがエレキという布陣のジョニーの新たな側面が楽しめる名曲です。

 もちろんブルース全開の曲もあります。ジョニー作の「トゥー・マッチ・セコナル」などがそれで、ジャズ・フルーティスト、ジェレミー・スタイグの客演も光ります。こういう曲があると落ち着きます。ジョニーはやはり100万ドルのブルースギタリストです。

Still Alive And Well / Johnny Winter (1973 Columbia)