「100万ドルのギタリスト」、ジョニー・ウィンターのセルフ・タイトルのメジャー・デビュー・アルバムです。この時、ジョニーはまだ25歳ですけれども、どうでしょう、このジャケット写真の貫禄ぶりは。25歳のデビュー・アルバムとは思えない落ち着きぶりです。

 さすがは「100万ドルのギタリスト」です。これはジョニーが当時としては破格の契約金額60万ドルでコロンビア・レコードと契約したために付けられた形容です。四捨五入にもほどがありますが、この当時の100万ドルは超大金一般を指す形容詞でした。

 ジョニーは10代半ば頃から、弟のエドガーとコンビを組んで、音楽活動を行ってきており、早くからテキサスの地元レーベルからレコードをリリースしてきました。1968年にはデモ・テープ代わりにアルバムを発表しており、大手が目をつけるのも時間の問題でした。

 チャンスが巡ってきたのはアル・クーパーとマイク・ブルームフィールドのフィルモア・イースト公演へのゲスト参加です。名盤「フィルモアの奇蹟」は同時期のウェストでの公演でしたが、イーストでの名セッションにゲストとして呼ばれたわけですから大したものです。

 ジョニーが披露したBBキングのカバーはコロムビア・レコードの耳に届き、ほんの数日のうちに破格の契約金でジョニーは大メジャーのコロムビアと契約したのでした。マイルス・デイヴィスが聞いたら怒りそうな処遇ですね。

 本作品は1969年4月に発表されたコロムビアからのデビュー・アルバムです。契約したのが前年12月、本作品をナッシュヴィルで録音したのが2月から3月ですから、当時としてもかなりの早業だったのではないでしょうか。レーベルの期待のほどが分かります。

 バンドはジョニー・ウィンターのギターとボーカル、ドラムにジョン・アンクル・ターナー、ベースには後にスティーヴィー・レイ・ヴォーンとの仕事で名を残すトミー・シャノンの3人が中核でした。基本的にはこの3人でごりごりとブルースを演奏していきます。

 彼のブルースがいかに本格派であったかは、本作に収録されたブルースの名曲「ミーン・ミストリーター」にブルース界の大御所ウィリー・ディクソンがベース、マディ・ウォーターズのバンドにもいたウォルター・ホートンがハーモニカで参加していることでも分かります。

 その他にも弟のエドガーやホーン・セクションも何曲かで参加して色を添えていますけれども、基本はスリー・ピースでの渋い演奏が続きます。ジョニーのオリジナルが3曲、ブルースのカバーが6曲の構成で、ジョニーのギターが冴えわたっています。かっこいいです。

 多くのブルース・アルバム同様に派手な演出は一切なく、ひたすら迫力あるギターとボーカルが繰り出されていきます。ねちっこいブルースですがここまで徹底するとすかっと爽やかですらあります。ストレートなアルバムの良さを再確認することができます。

 本作品は全米23位まで上がるヒットを記録しています。これだけで契約金の元がとれたかどうかは分かりませんが、担当者も胸をなでおろしたことでしょう。私も歳をとって、こういうアルバムが売れた時代がとても懐かしく思えるようになってきました。

Johnny Winter / Johnny Winter (1969 Columbia)