CDにはブックレットが付けられておらず、むき出しのピクチャーCDに加えて赤い鳥の羽とラミネート加工された名刺を添付するというお洒落な装丁になっています。安上がりなんだか、手がかかっているのか、判然としませんが、かっこいいです。ちょっと扱いにくいですけど。

 この鳥の羽はタイトルの「リユニオン・デル・ウッチェロ」、すなわち「鳥の会議」にちなむものであろうと思います。これはKO.DO.NAが2015年に発表した作品ですが、彼は2010年にも同じタイトルのアルバムをルクセンブルグから発表しています。

 調べてみると、「鳥の会議」はイベントの名前であり、コロナでしばらくお休みしていますが、2019年11月までに10回も開催されています。KO.DO.NAはこのイベントの中心人物である模様です。鳥にこだわる男、KO.DO.NAです。

 KO.DO.NAは、公式サイトによれば「クラブDJ・即興演奏・現代音楽を経て、劇団唐組に入団。俳優として活動する。退団後、劇中音楽の作曲や、トランペット・ソロによる活動を始める」という人で、「舞台音楽、即興演奏、ダンス公演、楽曲演奏と幅広く活動中」です。

 ワールドワイドに活動しており、米国や韓国、デンマークでツアーを行うなどしています。2014年にデンマークツアーを行った縁で、翌年にコペンハーゲンのレーベル、ヒップスター・レコードから発表したのがこの作品「鳥の会議」です。

 KO.DO.NAは黒木一隆による一人ユニットです。彼はトランペットを吹いているのですが、「ジャンルは人に言わせると『音響』なんだそうで」と彼が言う通り、エレクトロニクスによって生み出されたサウンドの奥にトランペットが亡霊のように響く作風です。

 トランペットの音響派といえばジョン・ハッセルが思い浮かびますが、ハッセルほどもトランペットらしい音色はありません。メロディーやリズムも明確なものはなく、雲のような音響でアルバムが出来ています。ノイズやアンビエントとも少し違います。

 私は音響派ということであれば鉄腕アトムの大野松雄を思い出しました。まさに音響にこだわりぬいた作品です。最後の「土佐日記」などは、フィールド録音とクラシック・バイオリンが組み合わさっているのですが、後者はレコードをかけて録音しているようでノイズが素敵です。

 すべてを一人で作り上げていると思われますが、ボートラだけはコペンハーゲンにあるサウンド・トラック・スタジオのエンジニアを務めているトーマス・リーとの共演です。やはり二人になるとサウンドの表情が変わります。どすのきいた地鳴りのようなサウンドが出てきます。

 約1時間にわたる音響の連打ですけれども、日本人らしくこぶしをきかせている感じがするのが面白いです。ゆらぎを微細に加工して、美しい音響が現出します。軟弱な音楽などではなく、硬派でストイックなサウンドは聴きごたえがあります。ライブも面白そうです。

 しかし、彼のブログを見たのが運の尽きでした。ブログ記事「クソ動画」を見ながら聴くとまた音響が違って聴こえてきます。エクスペリメンタルなアーティストに勝手な先入観をもってはいけませんね。SNSの功なのか罪なのか。なかなか興味深い人です。

Riunione Dell'Uccello / KO.DO.NA (2015 Hipster)