ジャケットなしで透明のジュエルケースにシールだけ、というパッケージ・デザインがかっこいいです。本作品は日本独自企画でアートワークも日本の方が担当しています。このミニマルなサウンドにぴったり合った素敵なデザインです。

 本作品はレイディオ・スレイヴことマット・エドワーズによる、「ノー・スリープ」と題された一連の作品群を一枚のCDにまとめた作品です。発表は2009年4月で、翌月にはレイディオ・スレイヴの来日ツアーが行われましたから、来日記念盤ということです。

 マットは1975年にロンドンで生まれたDJ、音楽プロデューサーです。10代でDJを始めると、やがて私でも知っている伝説のミニストリー・オブ・サウンドのレジデントとなるなど早くから大きな成功を手にしています。その後は世界中でDJとして活躍しています。

 レイディオ・スレイヴはマットのプロジェクトの一つで、2000年に出来た当初はデュオでしたが、やがてマットのソロ・プロジェクトとなっていきました。マットは2006年にリキッズなるレーベルも立ち上げており、自身の作品もリリースしています。

 その中には、「ノー・スリープ」と題して、レイディオ・スレイヴ名義で発表した一連のシングルがあります。本作品は2009年までに発表されたパート・ワンからパート・ファイヴまでの楽曲をまとめた日本独自企画盤です。題して「ノー・スリープ・アット・オール」。センスいいです。

 ただし、パート・スリーはプロモーションのために制作された12インチ片面のみの作品だったため、本作品からは外されています。したがって、ここではそれぞれ2曲ずつ収録された4枚のシングルが網羅されていることになります。時期にして2006年から2008年まで。

 ちなみにこの後のパート・シックスのジャケットは、日本のデビルロボッツ社と共同で制作されたキューブリックになっています。トーフ親子シリーズの一貫でしょうね、題して「ノー・スリープ・ノー・トーフ」です。可愛らしいコラボでとってもお茶目です。

 この「ノー・スリープ」シリーズはことごとくヒットしており、特にパート・フォーの「グラインドハウス」はダブファイヤーのリミックスが「全世界で1万枚以上を売り上げたモンスター・ヒット」となったとメーカー・サイトには書かれています。

 サウンドは「ディスコ・ファンクからスモーキー&ダビーなディープ・ミニマル、そしてエレクトロ・ハウストラック」とメーカー・サイトには記載されています。この表現は今一つよく分かりませんが、聴いてみると、とても清々しいトラックばかりです。

 曲の構造は単純で、どの曲も大たい10分間くらい延々と同じビートが続き、そこに最小限の上物が投下されていきます。それでミニマルと呼ばれるのですかね。変にジャズによったり、エモに走ったりしないところが大変魅力的です。

 マットはもともと勝手にビッグ・アーティストの曲をマッシュアップして人気を得た地下マッシュアップの帝王だそうです。地下で鍛えた技はここでも生きているようで、気持ちがよくなる勘所を見事に押さえているのではないかと思います。清々しくて気持ちがよいです。

No Sleep At All / Radio Slave (2009 P-Vine)