LP時代にはアルバム・ジャケットを集めたビジュアル・ブックが結構人気を博していました。当時のジャケットはまさにアートでしたから、見ているだけで楽しかったです。CDになってとんと見かけなくなっていましたが、配信になって息の根を止められました。

 フループは1970年代初めに活躍したプログレッシブ・ロック・バンドです。彼らのアルバムはそうしたビジュアル・ブックの常連でした。あまりメジャーではないバンドのプログレ然としたジャケット群はジャケット集の中にとても収まりがよかったです。

 北アイルランドの首都ベルファストで活動を始めたフループはギターのヴィンセント・マッカスカーを中心に、ドラムのマーティン・フォイル、オーボエとキーボードのスティーヴン・ヒューストン、フルートとベースのピーター・ファレリーの四人組です。

 ボーカルはマーティン以外の三人が担当し、リードはピーターです。オーボエやフルートが登場するところなどいかにも1970年代初頭のプログレッシブ・ロックです。アートワークをピーターが担当しているところもプログレ然としています。

 1971年6月にベルファストにてロリー・ギャラガーのサポートとして 最初のギグを行って以降、彼らは英国・アイルランドを駆け巡り、年によっては年間230日もライブを行うようになりました。ライブ・サーキットで鍛えられたバンドです。

 この頃、彼らがサポートしたバンドにはクイーン、スーパートランプ、ELO、フォーカス、コックニー・レベル、ジェネシスなどそうそうたる名前が並んでいます。注意すべきはこの時点では彼らはスーパースターではなく、同じライブ・ハウス・サーキットの仲間だったということです。

 1973年3月にデモを作成したフループは見事にパイ・レコード傘下のプログレ・レーベルのドーンと契約を結ぶことに成功します。そうして8月にはライブ活動を中断してアルバムの制作にとりかかりました。その成果が本作「知られざる伝説」です。

 アルバムはいきなりストリングスのみによるタイトル曲から始まります。この辺りはいかにも当時のプログレです。そして二曲目は当時の代表作「ディシジョン」です。ここからフループの本領発揮となります。巧みなコーラスワークと複雑に絡み合う楽器、素晴らしい曲です。

 さすがは年間を通したライブ活動で鍛えたバンドらしく、ファースト・アルバムにはそれまでに練り上げた曲がたくさんありすぎて、何曲かは収録できなかった模様です。フループにとっては満を持して放つ会心の作品ということなのでしょう。

 メンバーそれぞれの見せ場もふんだんに盛り込まれ、いかにも1970年代前半のプログレらしいサウンドがこれでもかこれでもかと展開していきます。クラシック的な要素もありますが、やはりそこはライブ・バンドでもあり、客を飽きさせない派手な演奏がいいです。

 残念ながら商業的にはさほど成功したとは言えませんけれども、仲間たちが次々とブレイクしていく中で次は俺たちだという熱気を感じるアルバムは捨てがたい魅力があります。サウンドはまるで異なりますが、それは登場したころのパンクと何ら変わることはないでしょう。

参照:Paul Charles HP : The Fruupp Story

Future Legends / Fruupp (1973 Dawn)